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睡眠障害

5月 19, 2025

自己肯定感って。

今日の診察の中で、患者さんと「自己肯定感」についてお話しする場面がありました。

「自己肯定感が低い」

「自己肯定感を高める」

そんな表現が巷で溢れています。

メディアでも若干誤解してこの言葉を使っており、多くの方が少し違った捉え方をしていると思います。

「俺ってすごいぜ」

「俺、完璧」

「ラーメン、つけ麺、僕イケメン♪」

こんなふうな感覚が「自己肯定感」としてイメージされていますでしょうか?

最後のはちょっと違うかもしれませんが・・・しかも古いか、、、

 

以前のブログでもお話ししたことがありますが

「自己肯定感」ってもっと控えめなもので

「これでいい」

「こんな私だけど、それでいい」

「これで〜いいのだ〜これで〜いいのだ〜ボンボンバカボン、バカボンボン」

という感覚です。

最後のは昭和世代にしかわからないかもしれませんが、笑。

すごくなくて全然いいのです。

キラキラしていなくていいのです。

インスタで羨ましがられる生活しなくて全然構いません。

 

私の場合、精神科医として「これでいい」と思えるようになったのは正直最近になってからかもしれません。

医療が生身の人間を相手にしており、まだ解明されていないこともたくさんある中で、「完璧な医師」というのは成立し得ないのですが、ずっと完璧になりたいと思ってきました。どんなに勉強してもどんなにあがいても、わからないことがたくさんあって、うまく行かないことがある。

でも、クリニックをはじめて10年間、ひたすら丁寧に、納得がいくまで、特に初診を大事に診察して最初の見立てとその後の答え合わせをするということを繰り返してきました。

5分の初診で患者数をこなす医師もいれば、初診の大半を心理士やPSWに任せて最後だけ医師の診察で締めくくるという医療機関も多い中、医療経済上とても効率が悪いと言われようが、専門医が最初から最後まである程度の答えが出るまで時間をかけて初診を行うということを愚直に繰り返してきました。患者さんが抱えているものが大きな場合は2時間以上かける場合も少なくありませんでした。

その結果、やっと自分なりに納得のいく見立てができるようになってきました。

決して完璧でも完成でもありませんが、ひとまず、今のやり方で良いと思えるようになってきたのです。

折しも、患者さんからのポジティブなフィードバックを次々といただけるようになり

それを噛み締めています。

10年前とは別の次元になってきました。

 

ここ1週間の例では、

「今まで何十年と人に理解されないだろうと思って話すこともしなかったけれど、今回先生に話してみようと思って理解してもらえるという体験が衝撃的でずっとあった胸のつかえがとれました。先生はすごいとおもいました」

「はじめて先生に傾聴してもらった時、水中にいるような一瞬空気が止まったような、なんだこの静寂な世界はという感覚がしたことを覚えています。自分のこだわりが足を引っ張っていることに気がつきました」

「当たり前のようにたくさん話をさせてもらいましたが、自宅に帰って友人に話したら、こんなに初診でじっくり聴いてくれてきちんと評価してくれるところは他にないよって言われました。本当にありがとうございます」

 

こんなありがたい感謝の言葉をいただきました(ご本人のお言葉其のまま)。

その他にもお褒めの言葉を頂戴しました。

 

俺ってすごいぜ!

 

あれ?なんか違いますね、そういう話ではありませんでしたね。。。

これはうぬぼれに近いかもしれません。

うぬぼれはよくありません。

すみませんふざけてしまい、ちょっと照れ隠しです。

 

これからも健康に気をつけながら、しっかりとした診療を行なっていくという今までの方向性でやっていきたいと思っています。

 

さて、冒頭の「自己肯定感」。

やはり生育環境の影響は大きく、親からの心理的虐待など受けてきた方が「自己肯定感が低い」大人になりやすいと感じています。

虐待の難しい問題は、「こんなことをするひどい親」なのだけれど、「やっぱり親に愛されたい、認められたい」「親だから嫌いになれない、親のことがどうしても気になる、親を否定しきれない」という葛藤が生じやすく、自分自身のあり方に混乱が発生してしまうことです。この矛盾した葛藤があるからこそ虐待の問題は苦しいのです。これは人生の長い間の課題となります。

こういった被虐待の問題を抱えた人たちが、その苦しみから抜けるためには、一旦「親は自分の望む形では愛してくれないのだ、事情があってそういうことができない人なのだ」と親に期待することをいったん諦めることではじめて再生が始まります。

自分の頭の中、心の中に棲みついて、「自分を否定する、責める、見捨てる親」の存在に気がついて、自分なりの親との適切な距離を見直す必要があります。

例えば、親とはお盆と年末年始にしか会わない、年に1回連絡を取るだけにする、別居する、

あるいは一切関わらない、そんな選択肢もありだと思います。

自分でどのような距離を保つか選ぶのです。

そこからはじめて辛かった自分を慰め、癒し、育てて再生することが始まります。

 

そういった一連の再生を支援するために「心の安全基地」が必要となるのです。

患者さんのことをしっかりと理解し患者さんの持つ本来の良さをきちんと評価してあげる「心の安全基地」となることが開院のテーマでした。

10年ほど前のブログに書いたかもしれませんが、当院のロゴマークはそのような意味を持っているのです。

 

当院の治療対象となるのは「安全基地を破壊しない人」であることが必要条件であるため、全ての方を受け入れることができないのは心苦しいのですが、多くの方に「心の安全基地」を実感していただけるようになったことはこの上ない喜びです。

いつもありがとうございます。

https://www.uta-net.com/movie/3150

 

ちなみに親子関係のカウンセリングなどは当院ではやってませんので悪しからず。

虐待親の治療も行なっていません。

治療対象となる症状を抱えた方々の背景にある問題を、診察の中でタイミングを見計らってご指摘したり、助言したりしながら症状の改善を目指すのが当院の治療となります。

4月 20, 2025

素敵なレビューをありがとうございます。

良い評価・口コミをいただきありがとうございます。

 

この方も長い初診受け入れ中止期間をお待ちいただいた方ですね。

大変お待たせして申し訳ありませんでした。

と同時に当院の価値を見出していただき心より感謝いたします。

 

全ての初診に2時間以上かけているわけではなく、必要に応じてどこまで掘り下げるか考えながら診察を行なっています。

今回は問題の根っこが幼少時の環境にある症状を認めたため、駆け足かつ長時間お話を伺いました。

怖くて辛いお気持ちに蓋をしてずっと頑張ってこられたご様子が手に取るようにわかりました。

診察でだいぶお疲れになったり、お気持ちが揺れたかと思います。

 

これまでに受診された医療機関では解離症状を伴う不眠に対しての診断や治療がなく、不眠=睡眠薬で対処されていたようでした。

不眠の原因は何か?可能な限り背景を掘り下げていくだけでも色々なことがわかることがあります。

このようなことからも初診の段階でボタンをかけ間違わないようにしっかりと評価することが大切であると常日頃思っております。

 

時間がかかったり簡単ではないと思いますが、誠心誠意の診療を心がけて参ります。

症状に一喜一憂せずじっくりとゴールに向かって進んでいきたいですね。

 

7月 4, 2023

睡眠ドック実施中。

当院は埼玉県のメンタルクリニックで初の睡眠ドック(SUIMIN)を導入した機関です。

自宅で5日間脳波の検査をしていただき、睡眠の質を評価し、アドバイスを行います。

費用は自費で、医療保険は使えません。当院通院中の方は割引きの優待があります。詳しくはお問い合わせください。

 

当院では睡眠に強い関心を持ち、睡眠センターと連携しながら各種睡眠障害の治療のほか、睡眠の検査にも携わってきました。

従来の睡眠時無呼吸症候群の診断のための検査も行ってきましたが、

診療を行う中で、睡眠の質を知りたい!という声をたくさん聴いてきました。

今回睡眠ドックで病気の有無にかかわらず、睡眠の質をチェックできる検査をはじめました。

精密な検査による睡眠ドックは上尾メンタルクリニックが埼玉県の医科、心療内科、精神科で初となります。

(従来の睡眠検査のゴールドスタンダードであるポリソムノグラフ検査との同時計測試験で、中央値86.9%の一致率を確認しています。)

 

睡眠時無呼吸の検査は一般的に一晩の検査であり、その日のコンディションによって数値がだいぶ変わってしまうこともありました。

任意の5晩の睡眠の検査をすることで、平常の睡眠がどうなっているのか評価しやすくなります。従来の酸素濃度の検査はそのうち2日間同時に行います。

睡眠のトラブルのリスクについても評価します。(ただし、通常の診療ではありませんので確定診断やその結果に基づいて治療を開始することはできません)

そして睡眠改善のアドバイスも行います。

 

検査結果は睡眠の専門医が評価して書面にいたします。

さらにご希望の方には当院では睡眠障害の治療や検査に携わってきた院長がその結果を解説いたします。

 

あなたの睡眠しらべてみませんか?

ちゃんと眠れていないと、こんな影響があります。

こんなお悩みも睡眠が関係している?!

自宅でできる精密検査!(脳波測定のため、おでこや首にシールを貼りますので、ご自分で貼れない方はご家族に貼っていただく必要があります)

 

睡眠の質を知るには、脳波計測が最適です

申し込みはお電話の上ご来院いただき、申込書と同意書、問診票にご記入いただきます(メールアドレスが必要です)。

窓口で費用をお支払いいただくか、お振込みを確認させていただいた時点で契約成立とし、その後QRコードと検査のIDをお知らせします。

WEBでの手続きが完了次第、検査キットをご自宅にお送りいたします。

任意の5晩の検査を終えたら、お早めにキットを返送してください。(最初の検査も含め、毎回機器の充電が必要です)

結果は2~3週間後にご自宅にお送りします。

さらに院長による解説をご希望の方はご来院の予約をお電話でお願いします。

(インターネットがご利用できない方は当院でネット手続きを代行いたしますので、睡眠アンケートを手書きで提出していただきます)

(ご来院無しでの申し込み、専門医の報告書を直接郵送やWEBで確認いただくプランも可能です。その場合は院長の解説はありません。)

費用についてはお問い合わせください。

少し価格を抑えた2晩のコースもご用意しています。

2022.9

11月 30, 2022

睡眠リズム障害におけるメラトニンやラメルテオンの使い方。

長ったらしい題名になってしまいました。

今晩は慶應大学の若手向きの睡眠障害のクルズスに参加しました。

大学では教育目的にしばしば若手向きのクルズスが開催されます。

若手向きというと入門者向きの初歩的な内容の講義と連想するかもしれませんが、

しっかり最先端の知見が盛り込まれ、しかもわかりやすいということでちょくちょく参加しています。

製薬会社とは全く関係なく開催されるので、ニュートラルな内容でとても良いのです。

今回は睡眠リズムと関係の深いメラトニンという物質についてのお話がありました。

私もメラトニンについては高校生の時に興味を持って調べたことがあり、医師になってから薬として処方するに至り感慨深いものがありました。

それなりに勉強いたしますと、ロゼレム(ラメルテオン)などの使い方は普通の眠剤とは異なることを知ります。

メラトニンが作用する受容体にはMT1受容体とMT2受容体があって、前者は眠気に関連、後者は睡眠のリズムを前後に位相させる働きがあります。容量と服薬する時間帯によって効果が変わってくるので、添付文書の用法用量の知識では使いこなせません。

詳しい知識を持って処方した内容が理解できない薬局さんもいらっしゃいます。

慣れていないある薬局は「処方が間違っている。医師がわかっていないのではないか」と患者さんにも伝えたそうです。患者さんともトラブルになってしまうのです。

ポイントがつくからといってそういう薬局で服薬指導を受けて欲しくないのです。

昔から「ミニドクター」と揶揄される薬剤師はいました。

医師よりも自分の知識の方が優れていると示したいがために中途半端な知識で患者さんに知ったかぶりをしてしまう薬剤師です。

流行っている情報を鵜呑みにして「こんな副作用が出るので気をつけたほうがいい」などと、患者さんの服薬状況にそぐわない指導で不安に陥れたり、

最先端の増強療法を知らずに「この使い方は間違っている、この医師はヤブ医者だ」とか

自分の知識をひけらかそうと(勉強不足の知識で)マウンティングしようとします。

シンプルに疑義紹介で質問していただければ、薬剤師にも気持ちよく情報共有しますが、このような態度の方は話を聞いてくれませんから、

患者さんには薬局を変えてもらうようにお願いするしかありません。

もし、医師から薬局を変えてくださいという話があったら、そういった事情だとご理解ください。

薬を間違えたことは一度もありませんが、1日3回で服薬するところを2回と入力してしまうなどの処方ミスは稀にあります。

そういう時は、謝罪と共に、指摘してくださったことに感謝をお伝えします。

精神科の薬は結構難しいので、慣れているところが良いと思います。

最近できたばかりの薬局にミニドクターがいて、患者さんには利用して欲しくないなと思っていたところ、しばらくして閉店していました。周囲の病院や医院とトラブルが続いたのかも知れません。

ミニドクターは企業の産業看護師や産業保健師の中にも存在することが確認されています。

産業医療がますます発展していく中でミニドクターは淘汰されていきそうです。

 

 

 

 

 

 

6月 12, 2017

上尾市広報誌ー不眠

 

 

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http://www.ageomed.com/index.php?action=guide62:index

 

平成29年7月上尾市広報に私の執筆した「今月の健康ー不眠」が掲載されます。是非ご一読を!

今の時期、キンキンに冷やした水でつくる水出し緑茶も睡眠によいですね。冷えた水でつくる場合は、カフェインはあまり抽出されず、リラックス効果のあるテアニンが抽出されます。熱いお茶はカフェインが含まれますので寝る前だと冴えてしまいますので、ご注意を。

 

 

☆ただいま初診の予約が8月以降となっております。

折角お電話をいただいても他の機関に当っていただくことになった皆様、すみませんでした。

ご予約の方、お待たせして大変申し訳ありません。

 

 

9月 14, 2016

医師会講演会 睡眠障害の夕べ~今夜は眠らナイト~

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こんばんは。上尾メンタルクリニック 院長です。

本日は医師会で睡眠障害の講演会「今夜は眠らナイト」を行ってきました。

何かしゃべらナイト!と張り切っていましたが、

ご質問もたくさんいただき盛り上がっていただけたのではないでしょうか?

睡眠センターの先生までお越しいただき、今後の連携をお約束いたしました。

改めて睡眠の奥の深さを感じます。

普段は診察の中でエッセンスをぱらぱらと患者さんにお伝えしていますが、

患者さん向けの冊子など作ってみてもいいかもしれませんね。

時間ができたら(笑)頑張ります。

次の講演会が間近なので、すぐに頭を切り替えます・・・

 

 

7月 30, 2016

あげお花火。

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こんばんは。

上尾メンタルクリニック院長です。

もう7月も終わりですね。

忙しくしているとあっという間に夏が終わってしまいそうです。

 

今日は診療を終えて、帰りにあげお花火を見ることができました。

携帯で撮りましたが、きれいには撮れませんでした。

いつか綺麗に撮ってみたいです。

 

今月後半は今までの公務に加えて、看護専門学校副校長の就任、運営委員会、医師会理事会、県央広域連携委員会

など立て続けにあり、なんとか乗り切りました。

 

1週間ちょっとの間に皆様の前でスピーチをする機会が5回くらい重なりました。

人の話を聞くのは慣れていますし、社交恐怖の患者さんの治療もうまくいくことが多いのですが、

私自身は口下手なのでスピーチは得意ではありません。

それでも、仕込んでいったネタで何回かは皆様に笑っていただけましたので、良しとさせてください。

 

今度は医師会の先生方に睡眠に関する講演会

『睡眠障害の夕べ

~今夜は眠らナイト~』

 

市民の方には

「統合失調症家族教室」

 

などの講演をさせていただく予定です。

少しでも聴いてよかったと思っていただけるように準備しようと思っています。

 

 

 

 

 

7月 24, 2015

ジャングルの仲間たち(エバーフレッシュ)、睡眠薬について

こんばんは。

上尾メンタルクリニック院長です。

ジャングルの仲間を紹介していきます。

 

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一度 水のやりすぎで危篤状態となった合歓の木(エバーフレッシュ)です。

猛暑ですが、この木が涼しげでさわやかな印象を与えてくれます。

夜になると葉を閉じて睡眠モードに入ります。

植物もちゃんと寝ているのですね。

 

この暑さで寝苦しい夜も続いていますね。

人間には睡眠障害という病気があります。

 

このまま睡眠障害の話に脱線しちゃいます。

睡眠障害はいろいろな原因で生じます。

原因によってそれぞれ対処がありますが、睡眠薬を使う必要がある方の中には、睡眠薬の使い方を間違えている方が意外と多いのです。

眠れない人は、「今日もまた眠れないのではないか、また寝れなかったらどうしよう」と睡眠に対してこだわるようになります。

これを神経症化といいます。

一方「薬には頼りたくない、癖になったらどうしよう」という不安にも突き動かされます。

そのため、寝れなさそうな時だけ睡眠薬を飲んで、そのほかは飲まないなど、飲んだり飲まなかったりします。

そうすることで、 結局「今日は寝れるか、寝れないか」と 睡眠にたいするこだわりをずっと持ち続けることになります。

そのため余計眠れなくなるのです。

睡眠薬が必要になった方は、睡眠薬を毎日続けて飲んでいき、睡眠のことをあまり考えなくても寝られるようになって、それが習慣となり、

自信がついてから、薬の減量を考えていったほうが良いです。

薬の減量には作戦がありますから、自己判断で急にやめないようにしましょう。

睡眠薬を頓服で使うのは、たまに眠れないとか、何か次の日緊張する行事があるときに眠れないとか、そこまで軽症化してからが良いと思います。

 

睡眠薬の使い方でもう一つ重要なことがあります。

睡眠薬を服用したら、布団に入りましょう。

なにか作業をしていると、寝るタイミングを逃してしまって結局眠れなかったり、

あるいは、寝ぼけて異常行動をとってしまうこともあります。

 

なお、睡眠薬との相性の問題で、一回寝付いた後、夜中に起きだして過食をしてしまうという「睡眠関連摂食障害」が生じることもあります。

思い当たる点がある方は主治医に報告して対処してもらいましょう。

 

では。良い睡眠を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では。