当院のパニック症、広場恐怖症専門外来には大勢の患者さんが遠方からもお越しになっています。広場恐怖症なのに電車4本乗り継いでくるって、、、ご無理なさってないですか?笑。
それだけ治したいと本気で当院を目指してお越しになっているのです。
悪魔の財務省の陰謀で診療報酬を減らされているので、保険診療を続けるのであれば、とにかく簡単にさらっと診て、できる限り数を診ていくようにせざるを得ません。
でも、わざわざ遠方から本気で通院してくる患者さんに適当な診察で済ませるわけには・・・
この辺が私の甘いところですが。
20年前はパニック症すら知らない精神科医がどの患者にも「不安神経症」という診断名をつけ、デパスを一日3回服用、などという残念な処方をしていることも珍しくありませんでした。
10年前は広場恐怖症を知らない精神科医が不安発作を認める患者すべてにパニック障害という診断名をつけ、これまたソラナックスを一日3回服用という残念な処方をしているのが散見されてました。
いまは広場恐怖を知らない精神科医はさすがにいないと思いますが、
広場恐怖の中身がわかっていない精神科医はまだいます。
一旦デタラメな治療をはじめられてしまうと、修正が難しくなりその後の治療がやりにくいので非常に迷惑だと感じておりました。
「操作的診断は本質的ではない」などとつべこべ言い訳せずに、最低限DSM-4くらいは頭に入れとけや、と若かりし私はイラついていたのでありました、笑。
パニックや広場恐怖は治療が簡単だから・・・、と言う精神科医もいると思います。
確かに、治療しやすい疾患です、笑。
わざわざ専門外来と名乗るようなものでもないかもしれません。
本当に適当にやれば、1分くらい話聞いて、薬さっと出すこともできなくもありません。
それがたまたまじっくり診察した結果と同じになる場合すらあります。
しかし、掘れば掘るほど奥が深いのです。
広場恐怖になりやすい人はどのような人でしょうか?
詳しい問診で生育歴、発達歴、心理的要因など色々なことがわかります。
当院ではトータルに評価しますので、予後や他の病気の併発などさまざまな見通しを立てるようにしています。
診察時間に余裕があるときには広場恐怖の患者さんにいろいろなたとえ話をしたり、病気の名前の由来についてお話することがあります。
私の記憶がただしければ、という前提で読んでほしいのですが、
「広場」ってなんぞやって皆さん思いませんか?
TV露出が多い精神科医が以前TVで広場恐怖の間違った解説をしていました。
それくらい広場という日本語と疾患の中身にギャップがあるのです。
そのヒントは古代ギリシアにあります。
現在の医学に古代ギリシア医学が多大な影響を及ぼしており、「ヒポクラテスの誓い」を医学生の時に学んだ記憶があります。
広場恐怖はギリシア語を語源とし、agoraphobiaと言います。
アゴラ=広場は古代ギリシアで、城壁に囲まれた人々が集まる公共の場所を指します。
(ここから先は私の記憶によるものであり、ネットでも確認できませんでしたが)
アゴラでは政治が行われていました。
政治はそれそれの利害関係を調整するための戦いでしたから、
民衆が密集し揉みくちゃになって喧々諤々議論していたのです。
身動きが取れず、すぐにその場から離れたいと思っても逃れられないのです。
ということで、広場はだだっ広い空間という意味ではないのです。
誤訳とまではいかないまでも、もっと別の日本語を使えばよかったのではないかと思います。
満員電車で気分が悪くなってすぐに降りられなかった、
そんな体験から広場恐怖を発症する人もいます。
パニック障害を発症してから、徐々に広場状況が苦手になっていった人もいます。
満員電車、電車の急停止、集会、会議、学校説明会、映画館、高速道路、渋滞、トンネル、歯科治療、美容院、美容室、美容院の顔タオル、MRIなど
様々なシチュエーションでそれぞれの「すぐに逃れられない状況」があります。
何がダメで何が大丈夫なのか、人それぞれで、その違いから特性の違いを考察もします。
部分的な自閉スペクトラム特性で感覚過敏がある方では、ごみごみ、ざわざわした情報量が多い状況がもともと苦手であったり、過剰な記憶力がわざわいして発症リスクが高いと私は考えています。
ADHD傾向の人はそもそもじっとしているのが苦手で会議などで発症するかもしれません。
あるいは分離不安によって本人が安全と感じる場所(たとえば自宅など)から離れること自体に不安を感じるケースなど単なる行動療法では改善が期待しにくいケースもあります。
そのほか詳しく見ていくといろんなパターンがあって、それによって予後もだいぶ変わります。
また広場恐怖を発症する機序には動物的な本能もかかわっています。
診察室で私の例え話を聞いたことがない方はぜひリクエストしてください。
当院では、割と重めな症状の広場恐怖の方でも行動療法に持ち込みやすいようなオリジナルの工夫を凝らした治療を行っています。
従来の行動療法、認知行動療法では若干スパルタな要素があり、治療に乗せられないひとがいたり、スパルタすぎるカウンセラーによってより深刻なトラウマを作り出してしまうこともあるからです。
精神医学だけではなく、私が大好きだった循環器内科の研修時に学んだ臨床医学を融合させた治療はぜひ体感していただきたいと考えています。
このあたりは当院の強みであると自負しています。
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