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4月 16, 2025

綱渡りと初診の醍醐味。

前回のブログで仕事量が増えすぎて、毎日綱渡りと書きました。

カンペキっ。

 

患者さんにお渡しする書類はなんとか間に合っていますが、

最近カルテ作成が遅れがちで。

 

今はまた初診の受付を中止にしていますが、

初診はとても大事なセッションだと私は思っています。

せっかく初診のために時間を無理やり作っているのだし、

初診をちゃんとやらなくて、いつちゃんと診るというのでしょうか?という感じで。

 

症状や病気の内容にもよりますが、複雑性トラウマの方などの病歴は大概混みいっています。

「そんなことある?」と驚くような過酷な生育環境だったりして、話を聞いているとキリがなくなることも。

患者さんの時間前後感覚や記憶も曖昧で、とっ散らかっていることも少なくありません。

というわけで初診に2時間〜2時半かけてしまうことが最近続いてしまって、私もげっそりです。

(2時間もどうやって作っているの??

外来やっている医師なら当然疑問に思うでしょう。

もちろん連続して2時間は確保できません。

前半と後半に分けて、患者さんには休憩を挟んでもらいます。

その間に再診の患者さんを次々と診ていくのです。)

 

ただ、「話したくないことを無理やり聞かれた」ということにならないように注意しなければなりません。

トラウマについては患者さんの反応を見ながら慎重に伺います。

その前の段階で、「詳しく話したくないという方は当院を受診しないでください」とHPにもしつこく掲示していますし、

電話の段階で秘密主義の匂いがする人やあまり触れられたくなさそうにしている方は、他の機関にご相談していただくように誘導します。

その上で診察しているので、ほとんどの患者さんは率直に話をしてくれます。

 

まずは患者さんの緊張度合いを見て、雑談から入っていくこともあります。

最初は症状や経過の確認をし、診断のあたりをつけ、徐々にその背景となる生育歴や発達の傾向、家族歴を伺っていきます。

患者さんの言ったことをおうむ返しにしながらカウンセリングするのが基本ですが、私はあえて私が理解した言葉に言い直して患者さんに一つ一つ私の理解があっているかどうか確かめながら先に進めます。

大体前半の段階ではすでに患者さんのテーマを見出しているので、あとは占い師のようになっていきます、笑。

患者さんに言われる前に患者さんの特性などを次々に当てていくと、患者さんの目が輝いてきます。

「理解してもらえた」という感動が湧いてきた心の動きを感じると、私もだんだん乗ってきて、患者さんとシンクロしてきます。

「手に取るようにわかる」状態が共感の極みです。

最後は、今どういう状態なのか、どうしてこうなったのか、特性や生育歴、遺伝的な要素などの背景と関連があるのか、できるところまで詳しく説明します。

ご本人が話したい!って思う範囲で伺っているので、滅多にありませんが、たくさん話しているうちにトラウマの蓋が開きかけてしまうことが稀にあります。そうならないようにしていますが、そうなったとしてもちゃんと責任を持ってフォローしますよ。

 

大変だけど、やりがいはあります。

 

一方で当院では少数派ですが思考がまとまらず、意思疎通が難しい方がいます。

そういう場合は、共感ではなく、単に症候・症状の評価にとどまります。

これはどの精神科医がやっても同じですね。

 

あれ、最初に書こうと思っていた内容からそれました。

カルテの作成が遅れるって話。

流石に2時間に及ぶ診察のカルテを診療時間内にまとめるのは困難で、後回しになります。

最近は再診1回目の時までに初診のカルテができていなかったり・・・

頭の中にエピソードが入っているうちに、他の患者さんと混同しないように書かないといけませんね。

割とインパクトのあるエピソードなので、結構細かく覚えています。

 

ということで、今日はもう眠いので、寝ます・・・

8月 29, 2015

共感するということ

 

こんばんは。

上尾メンタルクリニック院長です。

急に気温が下がって肌寒く感じるほどですが、

体調に変化はありませんか?

 

なんとなく、開院時から胡蝶蘭をきらさず置いています。

今度は珍しい柄に挑戦してみました。

 

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開院前は今ほど花には興味がありませんでした。

今は、来院される患者さんにすこしでも華やかな気分になっていただきたい。

と同時に

私自身の癒しにも必要と感じています。

 

死別や虐待、事件などさまざまなトラウマを抱えた患者さんのお話を伺っていますが、

患者さんの心に寄り添って共感していると、

程度は異なりますが、患者さんと同じような心のトラウマを一緒に受けることがあります。

患者さんと同じように私の心もダメージを受けてしまうのです。

つらい体験を語る患者さんを目の前にして思わずもらい泣きしてしまいそうになることもしばしばあります。

また、患者さんにうれしいことがあったら一緒に喜びます。

 

それゆえ共感する精神科医の仕事は感情労働の側面があります。

感情労働は非常にストレスのかかる仕事であります。

 

一方で患者さんの気持ちに関心がなく共感しないか、あるいは表面上共感しているふりをする精神科医もいます。

そうでないと身が持たないという立場もありますし、後者は専門的な技術であるとも言えます。

また、相手をコントロールしようとする傾向の強いパーソナリティ障害の方の治療においては

共感しすぎることは混乱の元になる可能性があります。

さらに、反社会性パーソナリティ障害の方には一切共感できないどころか怒りをおぼえることすらあります。

そういう点では、私はある種のパーソナリティ障害の方の治療には不向きであると言えます。

正直な話、そういった場合はお役に立てないと思います。

 

しかし、私自身が患者としての立場で診てもらいたいと思うのは共感するタイプの精神科医です。私自身はそうありたいと思っています。

共感的態度が治療促進的になるようなタイプの患者さんの役に立てることが自分の役割ではないかと感じております。

何でも屋さんにはなれないけれど、得意な範囲で尽力できればと思っています。

 

そして、共感タイプの私は特に自分自身の心身の健康に気を配り、長く安定して皆様のお役に立てるよう努力しなければならないのです。

 

今日はちょっと難しい話になってしまいました。

ではおやすみなさい。

 

追記:

共感は相手の言うことをすべて肯定するという意味ではありません。

相手の気持ちにおもいを馳せることだと理解しています。

極端なマイナス思考や物のとらえ方に対しては、別の考え方があることも示していかなければなりません。