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12月 25, 2022

精神科薬の副作用ー麻酔科医編。

夫に旅立たれ、激しい頭痛などの体調不良を訴える70代女性。お嫁さんにも素直に頼ろうとしません。しかし、具合が悪いといえばお嫁さんが献身的に対応してくれます。

色々な科を回って原因もわからず、薬にも反応を示さず、精神科へ行けと言われて当院を受診。葛藤を素直に言語表出しないが、色々な悔しさや喪失の怒りを感じる方で、いつも奥歯を食いしばっているのがすぐにわかった。本人が言いたいことを言葉で表現できるようになるまでは、薬や治療ではびくともしない可能性がある身体症状症と暫定診断。とにかく治療関係を作って色々お話ができるようになることを目標に治療を続けていくことになった。やはり喪失体験が中核になっているので老年期のうつ病の治療に準じた形で攻めていくのが正攻法と考えた。

抗うつ薬ミルタザピンを中心に、激しい口渇も訴えていたので、唾液分泌作用のあるランドセンを併用。そのほか痛みに効果を認める柴胡疎肝湯など少しマニアックな漢方を使って少し安定した。少し良くなるとまたしばらくして頭痛がひどいとお嫁さん経由で訴えた。調整するたびによくなるが、安定してしばらくすると激しい頭痛を訴えた。これは疾病利得ありの身体表現だと感じたが、一旦ここで頭痛についてはきちんと調べておこうと思った。私が一番信頼し、日本一だと思う頭痛の専門家である先輩をご紹介し、診療を受けてもらった。頭痛専門医と私で手紙のやりとりをしながら試行錯誤したものの、やはり、薬をかえて一定期間改善するものの、しばらくすると不調を強く訴え、持続的な効果を認める治療は見つからなかった。心の葛藤には一才触れることができなかった。

 

すると本人から近くの中堅総合病院の麻酔科のペインクリニックを受診してきたと事後報告あり。

麻酔科医の見立ては、抗うつ薬など精神科の薬を飲んでいるから頭痛が起きているという話だった。

え?当院にかかる前から激しい頭痛を訴えているんですけど。。。薬が原因っておかしくないか?

しかしお手並み拝見するために指示に従って当科の薬を整理していきました。

するとどんどん患者さんの体調は悪くなっていきました。

その間に麻酔科からの処方薬がどんどん増えていき、依存症を作るだけのデパスの最大量処方、ベンゾジアゼピンであるリリカの最大量処方、麻薬性鎮痛薬を含むトラマドールを最大量処方。そのほか十種類程度の薬がてんこ盛りになっていました。

多剤てんこ盛り大量療法を続けたままブロック注射も開始、本人の訴えは改善せず。

私としては彼女が引っ掛かっている葛藤を処理することが一番重要だと思っていますが、それをやりやすくするための薬物療法がしたかったのです。麻酔科医によって精神科のくすりがよくないという不信感を抱かせたまま症状は悪化。改善が認められず、そうこうしているうちに麻酔科医が急に冷たくなったそうです。精神科の薬は飲むなと言っていた麻酔医が向精神薬をてんこ盛りにしているという…。本当は精神科の薬がよくないと思っているのではなくて、精神科医の治療自体を見下していたのです。今度はまた患者さんが私に泣きついてくるようになったのですが、麻酔科薬(中身は向精神薬)の薬づけにされてしまい、こちらとしては手の出しようがなくなりました。

かわいそうだという反面、彼女が自分がこれだけ辛いのだということをアピールするために行動化しすぎてしまった感もあり、助けてあげることはできませんでした。精神科はだめだ、自分が優れていると思っている麻酔科医と患者さんの関係はその後どうなったかは知りません。

今でも、どうすればもっと良い結果を出せたのかわかりませんが、とても気がかりな患者さんでした。

12月 25, 2022

精神科薬の副作用ー皮膚科医編。

30代の女性。時折蕁麻疹が出るようになったということで市内の〇〇〇皮フ科を受診。初老の女医が3分くらいみて精神科の薬のせいだと言われたそうです。かなり断定的に。

たしかに精神科の薬には薬疹が出ることがある薬がいくつかあります。

有名なのはラミクタール、テグレトール、ルジオミール、コントミンなどです。

また古いタイプの抗精神病薬を長期的に使っていると特有の皮疹が認められることがあるということは、何年か精神科単科病院に勤務していれば常識となります。やはり実際に見たことがあるかどうかというのは非常に大事な要素になります。

ベンゾジアゼピン系の薬を服用していると光線過敏症になる可能性があるということも重要な知識です。

どのような皮疹がどのようなタイミングで出るとか経過を見れば、関連性を推定することはある程度できます。

まあ、確かにどの薬で薬疹が出るかというのはわからないので、色々調べていくしかないのです。

患者さんから相談を受けて、一つひとつ薬を抜いたりして経過をみましたが、皮疹の方は改善されません。

その間薬を抜くわけですから患者さんは当然症状がぶり返し、苦しみに耐えながら実証実験を繰り返すわけです。

結局埒が開かないので、私が信頼する皮膚科を受診してもらい、最終的に大学病院で全ての薬のアレルギー検査をしてもらいました。

結局精神科の薬は全くの白で、薬疹の原因ではありませんでした。詳しくは忘れましたが、他の皮膚疾患だったそうです。

元々そこの皮膚科は適当な診療で有名で、脂漏性湿疹をニキビだと診断したり、専門性に乏しい様子でした。

〇〇〇皮膚科ではその後も他の患者さんでも「これは精神科の薬の薬疹です」と宣告し、不安に陥れていましたが、ことごとく誤診であることが判明しています。

どれだけこちらが迷惑しているか知らないんでしょうか。患者さんの身にもなってみてほしいですね。

わからないものをわからないと正直に言えない医師。

わからないと精神科の薬のせいだと決めつける医師。

そういわれてもおかしいと気が付かない身体の勉強が足りない精神科医も少なくありません。

精神科医ももっと体の勉強もして信用される診療を行うべきだと感じます。

大学で私のオーベン(指導医)だった水野先生が院長を務めていらっしゃる都立松沢病院では、精神科医のための身体科研修コースというのもあるようです。

精神科医が体も同時に診察すると実は精神科の治療的にむずかしい部分も出てくるのですが、わかっているかどうかはとても重要だと思うのです。