医療においては通常、重症な方の治療が大変で軽症な方は簡単に治療できるというイメージがあります。
精神科では必ずしもそうではありません。軽症とカテゴライズされる方でも治療が非常に大変ということはしばしばあります。
これはベテランの精神科医でなくても、そのように感じている若手の医師も少なくないかもしれません。
症状が重いとされる統合失調症の治療を主体としている医師は、症状が軽いとされる神経症の方の治療がとても疲れるという医師もいます。
当院では軽症の方の治療に重点を置いています。
私の場合は単科の精神科病院の時の3倍は心(感情)と頭(思考)を消耗している感覚があります。
例えば当院の傾向として、大企業の役員、地位のある先輩医師、大学教授、法曹界などさまざまな分野でご活躍の方もおられ、やりがいもありますがとても神経を遣う場面もあります。自分よりIQが高い方を俯瞰的に診るということはとても難しいです。
また、精神科病院よりハードルが低いためか、幅広い多数の方からのアクセスがあります。
その中には当たり屋のような人が黒く不快なものを投げつけてくる事もあります。
一部の患者さんに限らず、精神科に強い偏見を持つ他科の医師であったり、苦し紛れにクレーマーを丸投げしてくる近くの総合病院の総合案内であったり、足を引っ張ろうとする同業者、HPを見て通りすがりに罵っていく人、あるいは医療機関から金を騙し取ろうとしてくる悪徳業者(口コミ消す消す詐欺など)かもしれません。
そういった悪意に対応しながら運営をおこなっているという側面もあります。
そのような中で疲れる時は、心を洗われるような方との出会いや関わりによって本当に救われます。
本日はあるアーティストの方から新作のアルバムをお贈りいただきました。
早速拝聴しましたが、心を打たれました。夜のライブハウスでお酒を飲みながら聞いたら最高だろうな。
やはり人を感動させるクリエイティブな方には憧れます。そして音楽には力があります。
また、日野市の消化器内科の先生からちょっとした用件でご連絡を頂いたのですが、神のように丁寧で優しい先生で、何か最近忘れていた感覚を思い出させていただきました。もうこの職業も長くなりましたから、人の攻撃性を敏感に察知します。相手が嘘をついているとか、操作しようとしているとか、悪意があるとか、すぐにピンと来てしまうのです。精神科医ってそういう点では擦れてしまっているので、純粋さを失いがちなのではないかと思います。今日の先生は純粋に素敵な先生なんだな、とハッとさせられました。
癒しのある1日でした。
(知人が診てほしいと連絡をくださいましたが、心理的に距離の近い人はやりにくいので断らせて貰いました。このことについては心苦しかったです。申し訳ありません)