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2月 4, 2023

型があっての型破り。

恩師の加藤雄司先生が愛した歌舞伎。

歌舞伎の中村勘三郎さんの言葉で、「型があっての型破り」というものがあります。

何かを習熟する時にまずは型を学んで身に付けてから、新たな方法を生み出していくというものです。


当院では広場恐怖症や社交恐怖に対して薬物治療と行動療法をミックスしたオリジナル治療を展開しています。

丸腰での行動療法よりハードルが低く、成功体験を繰り返しやすく、みるみる行動範囲が広がっていくのが目に見えて楽しいです。その分維持療法をしっかりやらないといけないというデメリットはあります。恐怖症の人にはチャレンジしていくマインドがないと症状はよくなりませんが、スパルタなカウンセリングを受けて悪化している人を結構見ます。スパルタな行動療法が必要なのは強迫症くらいではないでしょうか(私見)。

耳鼻科で対応しきれない不安やうつと関連しためまいや耳鳴りに対しても脳の感覚過敏仮説をたて、オリジナルの薬物療法と従来のめまい体操をミックスしたオリジナル治療も行っています。開院当初より時間があれば患者さんにめまい体操を一緒にやって指導もしまてきました。食いしばりや歯軋りとの関連も見出し、口腔外科と連携をとることもあります。

また、師匠の鈴木仁史先生の心身症、身体表現系の治療をベースにしてアレンジした、言語化が不得手な方の身体化症状に対するオリジナル処方もあリます。

トラウマ、悪夢、社交恐怖などの過剰な交感神経反応に対しては循環器でのトレーニングをベースにしたオリジナル治療を行っています。

精神療法では、必ず生じてくる転移も扱いますし(得意ではありませんが)、EMDRを一部使った混乱時の緊急避難的な対応もします(エキスパートではありません)。ドリルは好きじゃないので、認知療法より行動療法に重点をおいた簡易的な認知行動療法のエッセンスだけ真似て治療に使ったりもします。勤務医時代から患者さんと一緒にマインドフルネスやヨガをやったりしていました。

いろいろなものを取り入れて、自分なりの仮説をたて新しい試みも行っています。

 

しかし、どの病気にも「ガイドライン」というものがあって、標準的な治療方針が決まっています。

ますは型通りに治療する研鑽を積みます。

診断には操作的診断と言って職人でなくても誰でもトレーニングさえ積めば同じように診断名をつけることができるようなシステムも世界標準となっています。症状や経過だけで診断する方法で、原因や治療とそのまま結びつけられないデメリットがあります。

従来診断では精神科医の技量や感性によって診断名がバラバラになってしまうという問題点があったため、その点がクリアになりました。

診断も共通語として使える操作的診断の方法を習得することが必要です。

私の場合は北村先生から直接ご指導を受けるチャンスに恵まれ操作的診断もスムーズに行えるようになりました。

 

まずは基本を押さえないといけません。

基本を抑えて上で、新しい試みをすることになるのです。

型があっての型破りです。

 

しかし、操作的診断なんで馬鹿馬鹿しいと言う医師もいます。

従来診断と言われる、病態生理的な?視点に立った診断名は治療と紐付けしやすいし、本質は何か常に考えを巡らせるということも大変重要ではありますが、発達障害の詳細な知見が明らかになるにつれて、従来のうつ病の細かい分類などもちょっと怪しくなってきました。もう少しすると全く異なるうつ病などの分類ができるようになるのではないかと期待しています。

発達障害もちょっと前まではASDとADHDは合併しないと言われていたのです。両方の特性がある人を見て私は大いに混乱しました。当時の診断基準や教科書にはしっくりこない、納得がいかないことが沢山書いてあったのです。ようやく今になって納得できる答えが見つかってきたのです。とにかくどんどん知識をアップデートしていかないと間違った医療を続けてしまう可能性があるのです。

新しい型をまずは習得してまた次に行く、これが大事だと思います。

病態生理的な診断も日々バージョンアップし、操作的診断もバージョンアップします。

しばらくはこのダブルスタンダードで両方を用いて診断と治療を行っていく必要があると思っています。

この点にこだわって当院は診療を行っています。