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3月 6, 2022

適応障害の誤解

適応障害の診断をめぐって、いろいろと議論されることがあります。

著名な先生までも、適応障害について誤解されているのを目にすることがあります。

恐縮ですが、申し上げますと、、、

 

最近の臨床では、職域での不適応反応、適応障害をしばしば診ます。

適応障害とうつ病の鑑別について、適応障害はストレスとなる職場を休職すれば症状改善、うつ病は休職しても良くならないと言う先生がいます。確かに、休職した途端ケロッと良くなる患者さんもたくさん居られ、経過から適応障害と判断することもあります。しかし、中にはどう見ても職場への不適応であって、うつ病とは異なると思われる患者さんが、休職しても症状改善しないことがあります。なぜだろう、うつ病なのか、双極性障害なのか、診断を見直したり、治療を変えてみても、全く良くならない。傷病手当を満了して退職した途端、症状がケロッと良くなる方も居られます。どう言うことかと言いますと、職場のストレス、さらには職場へ復職を考えないといけない状況、嫌な職場と繋がっているという事態がストレスとなって続いている限り良くならなかった適応障害だったと言うことです。

どういうケースでそのようになりやすいかも私なりにわかってきました。

発達障害の傾向がある方は、嫌な体験がトラウマになりやすく、ストレスに対して非常に極端な反応を示すことがあります。

嫌なことは徹底的に嫌!となり、拒絶反応が全身から認められます。すぐに死にたいと激しい希死念慮を訴えることもあります。

そういう方は、嫌な職場と繋がっているだけで、鉛のような怠さや意欲低下、不安感が続くことがあります。非定型うつ病と表現できる場合もあります。職場での嫌な上司の言葉などがフラッシュバックして何度も思い出すこともあります。

嫌なものから離れるという欲求が達成されるまで、症状が消えることはないのです。転換性障害や身体表現性障害に繋がっているのです。発達障害の方は自分の欲求が、自覚の有無は別として、体にはっきり表現されやすいという傾向があります。発達障害の特性のうち、過敏性やこだわり、マイナス体験への過剰な記憶、自分の感情に気づきにくい、という特性と関連していることがあります。

私が適応障害という診断をつけるときは、適当につけているわけではなく、そこまで踏み込んで評価するよう常に思慮を巡らせています。このように精神科では経過を見てみないと確定診断をつけられないことも多いのですが、その時点の暫定診断というのもしっかり行いお伝えするようにしています。診断名も評価も伝えられず、いきなり薬だけ出されたという話は良く聞きます。初回で診断名を伝えるべきではないという医師もいます。

暫定診断と、今後変更されるかも知れない診断をできるだけ早期にお伝えできるのが、治療の導入として適切ではないかと私は考えます。

もちろん、皆目見当がつかないということはたまにあります。その時は、正直に診断がわからないことをお伝えした上で、候補となる診断を挙げ、一つ一つ検証していくとか、経過観察させていただくようご相談しています。

私とは違う視点で見たほうがよいと思う場合は転医をすすめることもあります。

わからないままできないことを自分一人でなんとかしようとすると多剤大量療法、薬漬けの原因となりうるのです。

 

 

 

 

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