患者の気持ちに立ってみると
自分が患者になって医療機関を受診してみると、医者としての日常の視点とはまったく違う景色が見えてきます。
大学病院に入院したときに気づいたこと。
クリニックを受診して「他人のふり見てわがふり直せ」と感じたこと。
そして「こんなふうに患者さんに接したい」と感銘を受けた瞬間。
どれも、私の臨床にとって大切な経験です。
近所の方を医療機関にお連れして気づいたこと
最近、近所の高齢なご婦人に依頼されて白内障手術の相談のため医療機関へ車でお連れする機会がありました。
「医師の説明が理解できるか不安」とおっしゃるので、診察室まで同席し説明を一緒に伺いました。
私が医師に身元をお伝えしていたこともあり、名刺までくださり、非常に丁寧にご対応いただきました。しかしそれは“特別扱い”というより、他の患者さんにも普段から同じ姿勢で接していることが、やりとりの端々から感じられました。
マイナス面も率直に伝えつつ、頭の回転が早く、ユーモアも交えながら、患者さんの理解度や気持ちに寄り添った誠実な説明。
専門用語を連発せず、平易な言葉で、しかも分かりやすい。
「こういう説明の仕方をしたい」という私の理想が、目の前にありました。
私自身、開業以来「中学生でも理解できる言葉で説明する」ことを心がけ、たとえ話をよく使うようにしています。
その延長でブログも平易な言葉を意識しすぎて、最近は砕けすぎてしまいましたが……笑。
そのご婦人は律儀な方で菓子折りを持参していましたが、その医師は丁寧にお礼を述べてくださいました。
当たり前のようで、実は“当たり前ではない”対応です。
別のクリニックで見た、残念な対応
同じご婦人を、別の循環器クリニックにお連れしたこともあります。
そこでは対照的でした。
医師は菓子折りを受け取っても礼を述べることはありませんでした。
(もちろん、そもそも付け届けを受け取らない主義の医療機関もあり、それはそれで筋が通っています。しかし「受け取るけれど礼は言わない」というのは、独特の価値観だと感じました。)
医療行為の面でも、循環器の診察でありながら聴診器すら当てず、採血データだけを見て、生活状況も確認せず、ただ患者さんを一喝するような指導。
しかもその内容が、明らかに的外れでした。
なぜかGoogleレビューは☆5がずらり……。
(理由は、察する人には察するところかもしれませんね、笑。)
説明は「ガイドラインでは」「基準値では」を繰り返すばかりで、柔軟性がまったく感じられませんでした。
この光景を見て、心の中でそっと思いました。
「私も気をつけよう」と。
他院を知ることは、自院をよくすることにつながる
患者さんの立場でほかの医療機関を見渡すと、勉強になることばかりです。
10年前と比べれば、当院もだいぶ改善されてきたと思います。
しかし、まだまだ伸ばせるところ、変えられるところがあります。
このような経験を今後も診療に生かしていきたいと思います。
どの業界であっても、誰に依頼するのか、その選択によって大きな結果の違いを生み出すことがあります。とりわけ医療はひとの命、QOLに直結しますので、
どの医療機関にかかるか、それで人生がかわるかもしれない。そんな思いを改めて感じました。



