以前通院されていた87歳のおばあちゃん。
すっかり良くなったので治療は卒業、今は薬も飲んでいません。
病院に勤務していた時代から診ていました。
歯科医師の息子さんが毎回送迎されていて、大切なお母様をお任せいただきました。
元々は新都心の方の人気のクリニックに通院されていました。
うつ病の診断でなかなか良くならないと、薬がてんこ盛りになっていました。
どんどん焦燥感が強くなって、今にも自殺してしまうのではないかという状況で
「うつ病の症状増悪のため入院お願いします」と私の勤務する病院に入院依頼されてきたのです。
私はすぐに薬の副作用である「アカシジア」という副作用が出ていると見抜いて、
入院するまでもなく症状を改善できると約束しました。
アカシジアという副作用は、寝ていても起きていてもいてもたってもいられない強い焦燥感を伴う不快な副作用です。
薬理の大家である先輩からは、この副作用のために自殺してしまう方も存在すると研修医時代に教わりました。
薬を止めるだけでゆっくりと症状は改善しますが、急に薬を止めるとこれまた色々問題が生じてくることがあり、ギリギリのハイピッチで減薬し、加えてアカシジアを抑えこむ薬をしっかりと使い、1〜2ヶ月で落ち着かせることに成功しました。
その後はうつ病になった原因にアプローチしながら症状の波に対応したり、高血圧症などの身体疾患も同時に治療してさしあげました。
同じような時期に桶川のクリニックからも同様に薬がてんこ盛りでアカシジアの副作用が出ている患者さんに対して「うつ病の悪化で入院依頼」があり、「おいおい、この辺のベテラン開業医はアカシジアもわかんねえのか、薬漬けにして・・・」とかなりネガなイメージを抱きました。(その後とてつもなくハイレベルな同門の先輩開業医と出会い、その偏見は覆りました。)
話はそれましたが、私が開業した後もそのおばあちゃんはついてきてくれました。
「雅子さんと同じ時に鬱になったのよ。頭にモヤがかかったような感じでね。」
と私の先輩が主治医となった雅子様の話をよく引き合いに出していました。
その後すっかり良くなって、頭はスッキリ、血圧も正常になっちゃったということで卒業されました。
おばあちゃんは私のことを息子のように感じてくださっていたのでお別れは寂しかったのですが、
突然電話がかかってきて「インフルエンザの予防接種受けに行くからよろしく」
と遠くから1人で来てくれました。
「今は調子がすごくいいのよ!お世話になってよかったわ」
30年以上昔の息子さんの歯科医院開業時の苦労話など話しながら予防接種をしました。
年に1回の注射一本が絆の証になったのです。
また来年も元気な姿を見せてね、と祈るようにお別れしました。
当院に合う人も合わない人もいたけれど、こういう絆が私にとっても支えになります。
なんとなく、ですが、当院でインフル予防接種してくださる方は当院で絆ができている人なのかな、という感覚を抱いています。
他に内科にかかっている方も少なくないのですが、わざわざ当院を選んでくださる。
また、私の注射がうまいとご評価いただいている方も少なくなく、家族を連れてきたり、会社の方を連れてきたりする方も増え、
この3週間程度で400人近く私一人で注射を打ちました。ワンオペで液剤の充填なども行い、仕事は丁寧で速く、息をつく暇もありません。
注射だって流れ作業にしません。毎回反省しながら注射の極意を研究しています。誰がやっても同じではないのです。
しんどいですが、がんばります。
命削って
毎日診療
そんな精神科医
わかってくれると
頑張れる
上尾みつを。