老年期女性。九州にお住まいでしたが、長年うつ状態で苦しんでおられました。九州の医療機関でいろいろな抗うつ薬を処方されたものの一向に良くならず、試しに使ってみたクエチアピンという非定型抗精神病薬が著効しすこぶる調子が良くなったそうです。何年か維持したのち、そろそろとやめてみたものの、やはりうつ状態となってしまい、その後も10年以上服薬を続けておられました。
事情があって上尾に転居され、当院で加療を引き継ぐことになりました。
症状には波があるようで部分緩解の状況でしたが、ご本人も現状維持を望み、同じ処方を希望されました。
特に身体的な既往もなく、体調も悪くないというので、ご様子を伺いながら投薬を継続しました。
ところが急に体調不良を感じ内科を受診したところ糖尿病が発覚し、総合病院に入院。
糖尿病内科の担当医から当科の情報提供および変薬の可否についてお問い合わせのご連絡を頂戴しました。
慌ててご本人と連絡を取り、クエチアピンが糖尿病の発症と関連している可能性があることを説明し、採血など定期的に行って管理すべきところを怠ったことを謝罪し、変薬の相談をさせていただきました。ご本人としては薬を変えることに大変不安をお示しでしたが、血糖に影響しないよう同等の薬効が得られるよう処方を検討し、フォローしていきました。
糖尿病内科の先生とは連絡をとり糖尿病の加療をお願いいたしました。
若い先生で、とても素晴らしい対応をされ、良い連携が取れました。
患者さんも元気になりとても助けられました。
非定型精神病薬の中には人によっては血糖値を上昇させてしまうことがあり、定期的に採血してフォローしていくことが望ましいとされています。
3か月に1回の採血が安全でしょう。もともと生活習慣病などで内科を定期的に受診されている方はそちらにお任せすることがありますが、そのような機会がない方は当院で採血させていただきたいと思います。
しかし今回は今まで何もなかったという油断から十分な注意を払わなかったのです。反省し再発防止に努めています。
ただ、実際の診療の中では採血検査でお金もかかりますし、注射が苦手という方も多く、3か月に1回の採血を受け入れてくださる患者さんは少数派です。ぜひ、健康管理のため採血希望とお申し出ください。
そのような状況でも常に目を光らせなければなりません。処方したものの責任です。
糖尿病内科編ではなく、私編でした。