医療情報にも流行がある。
漢方には副作用が全くないと誤解している人が多かった時代もあったが(いまだに多いかも・・)、漢方にも副作用があるのだということが一般にも少しずつ広まってきた。
例えば、漢方薬の一部に含まれる甘草という生薬によって血圧が上がってしまうことがある。
だいぶ古い話になるが、認知症には抑肝散という漢方が流行っていたが、生薬として含まれる甘草によって血圧があがってしまう人がいることが抑肝散の普及に伴い知られるようになってきた。
漢方とは違うが、それまで副作用がほとんどないと言われていた下剤の酸化マグネシウムが腎臓にたまってマグネシウム中毒を起こすことがあることもわかってきた。
これらの例のように副作用の注意喚起が医師の間で広まってしばらくして薬剤師の間で広まったりする。
私がある患者さんに甘草含有量の少ない漢方を処方していた。
血圧も正常だった。
患者さんが急に薬局を変えてから異変が起きた。
ポイントが付くから変えたという。(そもそも保険診療で値引きをして患者を誘引することは禁止されているので、ポイントを餌に患者を誘引することも違法となるのだが、大手薬局チェーンなどの政治的取引で黙認されている現状がある)
その薬剤師にこういわれたそうな。
「甘草の入っている漢方薬を使っている。血圧があがるかもしれない。処方医はそのことを知らないだろうから気を付けたほうがいい」と。
生薬から勉強している私には甘草が何グラム以上の場合は注意が必要とか、甘草で血圧が上がりやすい人がいるとか、そのような話は当たり前の前提となっています。その時点で変更すべき根拠は何一つありませんでした。
どうして私が副作用を知らずに処方していると考えたのかわからないが、何か疑義があるなら直接こちらに言って欲しい。
漢方ではないですが、下剤の酸化マグネシウムについても以下のようなやり取りが。
私が若くて腎臓もばりばり元気な人に酸化マグネシウムを低用量処方していました。
「酸化マグネシウムを続けて飲んでいると中毒になります。処方医は知らないと思いますので気をつけたほうがいいですよ」
もはやここまでくると、ただ自分が医師より物知りな薬剤師であるとマウンティング取りたいだけだとわかります。
マグネシウム中毒になる人はごく一部です。
高齢者など腎機能がおちているということがまず前提です。
そういう方に量が多めの酸化マグネシウムを継続処方していると中毒が生じかねないのです。
怪しい人は腎機能とマグネシウム濃度を測ります。
もはや医師の間では副作用も常識として使用されている酸化マグネシウム。
医師が知らないだろうと決めつけている根拠はわかりませんが、精神科医だから知っているはずがないと決めつけられたのでしょうか?
患者さんそれぞれ背景が違います。副作用も人によって出現する可能性や出現した場合のリスクも違います。
その患者さんに可能性の低い副作用のリスクを強調して不安に陥れることで自身の存在感を高めようとする薬剤師がいることは残念です。
以前は近隣の薬局との合同勉強会を開催していたこともあり、どういう意図で処方しているのかお伝えできる機会もありました。
患者さんがどこの薬局に行くかわからない状況だと難しいですね。