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薬の副作用

4月 26, 2025

採血。


お薬の内容によっては3ヶ月に1回は採血で内臓機能や薬の濃度を測ることが推奨されています。

売り上げ追及型のクリニックでは受診のたびに血を取られると評判?のところもあります。

うちでは、ごめんなさい、忙しさにかまけて間が空いてしまうことも少なくありません。

ご心配な方は診察の際にそろそろ採血を、とご希望をお伝えください。

 

今日は東京からわざわざ採血をしに、知人が当院を受診しました。

採血困難者で、どこの医療機関に行っても看護師さんに何回も刺されてしまい失神したことがあるということでした。

以前私が一発で採血したので、また今回もやってほしいというのです。

すぐには血管が見つからず、水をたくさん飲んでもらい少し様子を見てから採血しました。

せっかく来たので、あらゆる検査をしてあげました。もちろん、オプションは自費ですよ。

病状と関連した必要最低限の検査以外は医療費高騰の原因になりますから保険は使えません。

 

とはいえ、採血困難者の採血、 ウェルカムというわけではありません。

採血専門ではありませんし、大変なだけで、お金にもなりません、笑。

もちろん通院中の患者さんで採血苦手な方には可能な範囲で対応しますが。

 

昔勤務医だった頃、私が熱心に診察し、話を聞いてくれると評判になってしまい、次々と「話を聞いてほしい」という患者さんが集まってきてしまいました。他の日の担当医に不満をもった人が話を聞きつけて私の外来にきてしまうのです。

私の経験上、症状が明確ではなく、「話を聞いてほしい」という方のほとんどは、「私のことをわかってほしい、不満や愚痴を聞いてほしい」だけで、治療して自分をかえたいとは思っていません。アドバイスしても聞かないし、薬も拒否したり、何のために来ているのかわからない人たちです。毎回夫の愚痴を言い続けている女性がいましたが、「人は変えられない、変えられるのは自分だけ、どんな症状を良くしたいのか、自分の何を変えたいのか」と伝えても、やっぱり夫の愚痴を毎回30分聞かされました。切り上げようとしても最後まで吐き出していきます。これって治療とは言えません。社会保険料を使うのも医療経済的にも無駄だし、やりがいもありません。本来自費のカウンセリングで聞いて貰えば良い話です。

そのような人に時間を奪われずに、本当に治療を求めている方々に私のエネルギーをお分けするにはどうしたら良いか考えました。

「カウンセリングはやっていない」「とりあえず話を聞いてほしいというご要望は受けていない」とマッチングしないようにアピールしています。貴重な医療資源と保険診療費を治療ではない内容に注ぎ込むことはできません。しかしそう言った方はなかなか引き下がってはくれません、、、

私は採血ばかりしたくもありませんし、治療の意義のない無駄な話を聞くこと専門でもありません。

というわけで、良い評判ばかりを求めるのではなく、「できない」「やっていない」ということも示しながら、過度な期待を抑制し現実的な治療契約を結ぶことで、私の限られたエネルギーと時間を無駄遣いすることなく全力を治療に注ぐことができるように調整しています。もし当院を気に入ってくださって、どなたかにご紹介してくださることがあるとすれば「話を聞いてくれる」という表現以外でお願いできると助かります。

この辺のスタンスはなかなか一般の方には理解されないし、実際の治療内容を知らずにネットの情報だけをみた同業者からも「患者の話を聞かず薬だけ処方する簡単な診察しかしていない金儲け主義だ」と誤解され、通り魔的に嘘のレビューをされたこともあります。仕方がないことですが、本当に治療したいと思って受診された方でないと状況はわからないかもしれません。

 

*愚痴を聞くのは精神科医の仕事ではない、と言いましたが、

通院中の方にも色々と抱え込んだ事情がありますよね。

今までも聞いてきましたし、毎回でなければ伺いますよ。

時間かかりそうだったら、最初にそう伝えてくださいね。

工夫します。

 

12月 23, 2022

精神科の薬の副作用ー内科医編

時節柄、ちょっと楽しいブログでも書こうと思っていたのですが、気になることがありアップします。

ある女性が精神病症状を伴う不安状態の治療で当院に通院していました。

お薬を使ったところ改善傾向が見られたので、そのお薬を少し増やしたところとても調子が良くなりました。

しかし、その女性は本当は薬に少し抵抗感があるご様子でした。もちろん、薬を好んで飲む人は少ないし、薬なしで完全で健康でありたいというのは誰しもが願うところです。

そんな中、頭痛、発熱、鼻水などの症状が出現し、〇〇〇クリニック(内科)を受診。

ご時世的にコロナの検査をして陰性。細菌検査もしたが陰性とのこと。

薬を処方したが発熱や頭痛が続き、医師が下した判断は・・・

「メンタルの薬の副作用で熱が出ているに間違いない」とのこと。

精神科に強い偏見を持っている医師は、なんでも精神科の薬のせいにしようとします。

さらに、「大人が風邪で熱がつづくなんで10億円の宝くじを当てるのより確率が低い」と言い切ったそうです。

「今すぐ薬を辞めないと大変なことになる」「その精神科に行くな」とすごまれたそうです。

不安になった患者さんから連絡を受け、詳しく問診。

頭を振ると響く強い頭痛、吐き気、38度台の発熱、自律神経症状を伴わず。鼻水、咳少々。

これ見たら研修医でもわかりますよね?

特定できないウィルスによる無菌性髄膜炎も疑わなくてはいけません。

風邪は万病の元です!ウィルスなんて検査してもほとんど同定できないことが多い。

一方薬による熱の可能性はどうでしょうか?

おそらく内科の先生方は精神科の薬で発熱を生じている場面を見て治療にあたった経験のある方はほとんどいないと思います。

私は実際に何例も経験してきました。

やはり入院するような重症な患者さんで薬による発熱を経験しました。

1、悪性症候群:抗精神病薬による筋肉の固縮とそれに伴う筋肉の融解、著しい交感神経症状を伴った(いわばサイトカインストームのような)高熱。

2、セロトニン症候群:SSRIなどの抗うつ薬(と多くは相互作用をきたす薬物と併用して)による焦燥感、著しい交感神経症状を伴った(これもサイトカインストームのような)発熱。

3、薬疹を伴ったアレルギー性の発熱

などです。

これらは緊急事態なので、待ったなしで対処します。私の勤務していた足利日赤は精神科身体合併症の最後の砦のような病院でしたので自分で対処しましたが、通常のクリニックならばすぐに高次医療機関に転送コースです。

ですから、精神科薬による発熱には人一倍敏感です。

発熱の原因は精神科薬ではないことはほぼ断言できるものの、すでに患者さんは内科医より薬のせいだと言われて薬に不信感を持っています。

そういった状況を踏まえ「私としては経過や症状からは精神科薬による発熱ではなく、軽い髄膜炎などの感染症を疑います。」

とお伝えしました。

しかし担当医は感染症の確率は10億円の宝くじ当選より低いと断言しており、患者さんも困っています。

そこで、「私は違うと思うけれど、薬に対してご心配されているようですから、ひとまずお辞めになってもいいですよ」

「ただ、何か担当医の診療に疑念を抱いたら、すぐに別の医療機関で診療を受け、第3者の見立てを聞いてみてくださいね」

とお伝えしました。

というのも、〇〇〇クリニックは地元の医療従事者からは危ない医師として有名なのです。

開業まで勤務してきた病院でもトラブルの連続だったようです。

 

結局その後患者さんから電話があり、「やはりおかしいと思って直接総合病院に行きました。髄膜炎の診断で総合病院に入院しました、薬のせいだなんていってすみませんでした」と謝っておられました。担当医は髄膜炎で入院となったことを知りません。

いずれにしても髄膜炎はにおいや音で頭がガンガン響いて本当につらい症状が出てくるのでとにかく早く回復していただきたいと思いました。

悪いのは素人の患者さんではありません。プロフェッショナルなはずである担当医です。

超一流国立大学出身の医師がどうして研修医レベルの診断ができないのでしょうか?

そこが大変不思議ではあります。精神科の薬に偏見をもっていれば、それが原因に違いないというバイアスがかかります。

以前も提案しましたように医師などプロフェッショナルな資格については何年かに1回更新制にしてその都度試験を課すなど、専門家と言えるレベルをキープすることが必要なのではないでしょうか。

 

それから、薬の副作用について、大切なお話があります。医師でも知らない人がいます。

今やネットで薬の情報が溢れていますが、玉石混合で正しい情報に辿り着くのは難しくなっています。

医師が勉強できるような内容はネットで無料で多に入ることはほとんどありません。

お金を払って知識を得ることが通常です。専門家の意見を得るためには弁護士などそれなりの対価を払います。

ネットで無料で問題解決できるほどの情報は得られません。

また、情報があっても、情報を読み解く医学的な知識がないと正しく理解できません。

副作用と有害事象ってご存知ですか?

副作用は、薬が原因ではない!と断言できない、薬の使用により生じた有害な反応のことです。

原因かどうか、その確らしさの強さの順番に、「確実に因果関係あり」「多分関係あり」「因果関係の可能性があり」「多分関係なし」「関係なし」「不明」の6つに分類されますが、どこまでが副作用とされていると思いますか?

日本の場合(欧米とは異なり)「関係なし」以外を全て副作用として記載しています。

ですから「多分関係なし」「不明」なども含まれているのです。

欧米はもっとしっかり因果関係が疑われるものだけを副作用としています。

さらに、有害事象とはどういったことを指すのでしょうか?

原因かどうか因果関係とは全く関係なしに、薬を飲んでいた時に生じたあらゆる好ましくない有害な反応全てを有害事象と呼びます。

例えば、薬を飲んでいたときにたまたま風邪をひいたら、「熱、咳、鼻水、喉の痛み」などが有害事象として記載されます。

これを薬が原因であると勘違いしてしまうのです。

そういった基礎知識もなく、ネットの情報で、「熱」と書いてあったから、薬のせいに違いないというのは早計なのです。

薬の副作用でどのような機序で熱が出るのか詳しく知っている専門家から見れば、全く違う見解になります。

適当なことをいう人間ほど断言してしまいます。

わからないことも多く、結果が確定しにくい医療において、誇大広告、断言的な物言いは要注意です。

ネットの知識は調べてもいいけど、鵜呑みにしないほうがいいとおもいます。