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精神科

11月 15, 2024

10周年のお祝い。

当院に通院されている医療従事者の方から10周年のお祝いを頂戴しました。

「シャンパンの泡のようにたくさんの幸せに先生が包み込まれますように」という温かいお言葉を添えて。

大変苦労されたのですが、前向きにお過ごしで、こちらが泣けてきてしまいます。

ただ、これは高価なプレゼントですので、生活にすぐに役立つような何かをお返しにご用意いたしますね。しばしお待ちください。

私は患者さんのことを大事に思っていますが、患者さんも上尾メンタルクリニックをとても大事に思ってくださいます。

私の開院のコンセプト通り、「大切な人を任せたいと思えるクリニック」が実現しつつあり、

家族も診て欲しい、親友を診て欲しい、大事な患者さんを診てほしいなどとご依頼をいただくことが多く、

同業者の立場のある先生にも主治医として選んでいただけることは、誠に幸せなことです。

しみじみとありがたさを実感します。

患者さんが上尾メンタルクリニックを我がごとのように感じている様が垣間見れることがあります。

患者さんがご家族を連れてきて、「ここは広くて綺麗でいいでしょ」などと誇らしげに説明してくださる姿を見ると

我々の心もホクホクします、笑。ご自身の安全基地として感じてくださっているのだなととても嬉しいです。

 

丸10年クリニックをやってきまして、ギリギリ私が納得するレベルでの診断評価ができるようになりました。見立てが大きく外れるということはほとんどなくなってきました。最初の電話の段階でかなり先のことまで見通せるようになってきました。初診ではその答え合わせとさらに詳細を詰めて、治療方針の相談まで行います。しかし治療に関してはまだまだ改善の余地はあります。病院勤務時代は他の医師と自分を比べて相対的には寄り添うタイプだと思っていました。しかし、寄り添えない人、寄り添えない状況もあり、また尊敬する先生と比べて「私は優しくないな」と感じることも少なくありません。優しさがあれば、もう少し患者さんの腹が決まるのを待ってあげたりするのだろうなと思う場面もあります。ただ、私の体力や気力も限界があり、無理に優しくしようとしたら私が壊れるかもしれません。今は仕方ないかな。

昔の人気のガムの復刻版。

貴重なものもありがとうございます。

 

私も元気が出てきました!

がんばります。

 

人との絆で

元気でる

人間だもの。

上尾みつを。

 

 

6月 13, 2024

嬉しゅうございます。

猛烈に忙しくて、睡眠不足で、

今日は本当は友人に誘われたジャズライブを観にブルーノートに行く予定でしたが、

キャンセルすることになって、

あ〜きついな〜とため息まじりのおじさんに

こんなメールが。

 

過分にお褒めいただき、嬉しいやら恥ずかしいやら。

この方の文章が綺麗で美しくて、なんだか背筋がスッと伸びました。

私も毎日全力で診療しています。これは、ほんと。

それゆえ、ものすごく一所懸命に診療しているのに、極端に失礼な態度を取られたり、仇で返されるようなことがあると、

やっぱりそれなりにピリッとした受け答えをすることもあります。

ですから、このような評価をしてくださる方というのは、この方ご自身がこの綺麗な文章と同じ心で受診してくださっているということなのです。

ありがとうございます。

額縁に入れて診察室に飾りたいな、笑。

 

 

12月 18, 2023

わざわざ。

バリバリのビジネスマンでもないのに毎日メールが100件近く届きます。

さばききれないので、DMは極力受け取らないようにしているし、配信中止の手続きを行なってなるべくメールの数は減らすようにしています。

中には知人からのディープな相談だったり、返信内容を考えるのにとても時間がかかるものもあります。

バタバタしていると返信し忘れてしまうメールがあったり、見逃してしまうことも時々あるのです。

 

事業主なのでGoogleビジネスを管理しているのですが、Reviewがあるとメールに着信があります。

先ほど見過ごしていたそのメールに気が付き、確認しました。

当院を評価してくださるレビューは、レビューするのが趣味な人がついでに書き込んだような体ではなく

わざわざ私にメッセージをくださるためにアカウント作って手間暇かけて書いてくださっている感じがとてもするのです。

これはかなり心が温まりますね。

正直本当に嬉しいです。

 

この方がよく理解してくださっているな、ということの一つに

「はっきりと言う」という点があります。

意識してはっきり説明するようにしています。

はっきり言うと傷つく場合もありますが、

そうしないと伝わらないことが多いのです。

患者さんが自分のことを理解できるようになることは患者さん自身の力になります。

治療の過程で明らかになって、このタイミングだと思った時に共有していけるよう気を配っています。

 

もちろんわからないこともありますが、当院ではできるだけ初診時に見立てをはっきり説明するし、質問をいただいたらできる限りの説明を怠りません。(1回に10個とか質問される方も居ますが、それはごめんなさい、全部は答えられません)

 

上記の点をご評価いただき、よく気がついてくださってわざわざ手間をかけてお伝えいただき大変励みになります。

至らぬ点も少なくないと思いますが、これからも力を尽くして参ります。

心より感謝申し上げます。

11月 21, 2023

安全基地へ。

心の安全基地へ。

 

開院のテーマ。

その想いは果されているだろうか。

 

あう人も

あわない人もいた。

 

どこに行ってもアタッチメントが形成し難い人もいる。

 

しかし、自分なりの精一杯の誠意で真面目に続けていれば、

安全基地になれた、そう実感できる人が増えてきた。

人の苦しみを聴き続けていると

2次的に自分の心も傷つく。

共感ってそういうことだと思う。

 

真面目にやっているととてもしんどいけれど

安全基地になると

こちらも癒される。

 

一緒に喜べる時が来て、

一緒に味わうことがエネルギーとなる。

 

感謝の言葉は

有り難く

ありがたく

心を熱くする。

 

だからこれからも続けようと思う。

9周年。

 

10周年までには第3章を結実させたい。

 

素敵な素敵なお祝いを

ありがとう。

クリニックにとても合っています。

とても苦しい1年だったと思いますが、

よく乗り越えましたね。

 

大切なものを思い出して

人は強くなる

上尾みつを。

6月 12, 2023

初診予約がなかなか取れない理由。

  1. 本日も沢山の初診希望のお電話を頂戴いたしました。初診受け入れ中止のためがっかりさせてしまい大変申し訳ないことです。

だいぶ前にご予約いただいていた方の初診の診察もまだ続いています。初診再開までにはまだ時間がかかりそうです。通院中の患者さんのご家族などについてのご相談は診察の時にでもお伺いして当面の適切な対応を一緒に考えます。

繰り返しになりますが、当院の初診はかなり詳しい問診があります。

通常臨床心理士が毎週50分で1−2ヶ月かけてヒアリングするような内容を駆け足で60分(〜90分)で問診します。(相当端折ってはおりますが)人生のポイントとなるところを急ぎ足で振り返っていただきます。

病歴が長い人は特に人生の出来事と経過を時系列でまとめて来ていただけると、診断や治療の説明をする時間が確保しやすくなります。途中で切り上げないといけない時もたまにあります。まあ、そういう時は最初からわかっているので、できるとこまでやろうという考えに切り替えます。

ですから、ホームページにも記載してありますように、ご本人が受診に積極的でないかたや、あまりご自身のことを詳しく話したくないかたは受診されぬようお伝えしています。

私も一つのあたまでいくつもの思考をマルチチャンネルでめぐらせながら、全神経を集中させ診療しています。

なるべく早口にならないように、急かさないように配慮しつつも自分自身は脳みそ全速力ダッシュです。

今までもそうしてきましたが、診療は患者さんの同意が得られれば医療専門職の方で信頼できる方ならば見学も許可しています。

私の師匠もそうでしたし、公開しても恥ずかしくない診療を続けたいと思っています。

また、昔のような密室での診療は昨今問題が生じることがあります。

当院ではいつでもドアはオープン。スタッフの出入りもありますので、密室ではありません。

初診はかなりエネルギーをつかいます。

 

今日は大学の先輩であり、埼玉医大総合医療センターの吉益教授のご講演もありました。私が見上げるほどのご身長ですが、だれよりも紳士的で優しい先生なのです。知性があり頭が整理されている方には憧れます。

 

これから税理士との打ち合わせのための資料をつくります。

 

とにかく、好きなだけ眠りたい。

これが今の私のささなかな願いです。

 

追記:

上記事情もあり、私のモチベーション維持のためにも、本当に当院を受診したいとおもっている方を優先的に受け付けたいと思っています。いくつかのクリニックの予約をとっておいて、すぐに受診できるところに行き、それ以外を無断キャンセルする方もいます。また、治療をしっかり受けていくつもりがない方が「とりあえず」予約していくということもあります。お電話ですぐに見分けられるのですが、そのような方ほど食い下がって予約を取ろうとするのです。当院が損害を受けるだけではなく、本当に受診が必要な方の機会を失うことになります。モラルの問題もあり、キャンセル料をお支払いいただくなどのペナルティを課す以外に方法がないのが残念です。

6月 10, 2023

メンタルクリニックは薬を出すだけ?

今日も忙しく後半は嫌な頭痛も出現。

60人を超えたあたりでキツくなってきたので、アセトアミノフェンを服用し、診療を続けます。

 

なんと、大谷翔平選手と想定外のつながりを持っている方もいて、大変驚きました。

世界は狭い!?

サインもらえないかな?笑

いやいや職権乱用はいけません。。。

 

 

3月から5月は転居によるお別れの季節です。

 

しかし、最近は転居後も当院に通院してくださる方が増えてきました。

東京から通院して下さる方、

はたまた広島や仙台、茨城、岩手、山形、千葉などからわざわざお越しくださる方もいます。

 

私にとっては想定外だったのですが、

そのような患者さんから言われることは、

「受診して話すとモヤモヤした不安が言葉になって消化されていく」

「色々な振り返りをできたことで自分のことが少しずつわかってきて、冷静に対処できるようになった」

「話しにくるのが楽しい」

とまで言ってくださるのです。

 

私はおしゃべりでもなく、話もつまらないのです。

ひたすら真面目にやっているだけです。

私はメェ医ですが、名医ではありません。

山羊さんメェ医です。

本気出してこれくらいのつまらなさです。

(長文です)

思えば、私の師匠は力動的精神医学と児童精神科を専門とされていました。

その影響で、開業時は患者さんの生い立ちとか心理学的なことにやや偏った診察をしていたように思います。

 

その後は認知行動療法の行動活性化、あるいは行動療法に力を入れたり、

マインドフルネスを一生懸命やっていた時期もありました。

患者さんと一緒にヨガをしたり、瞑想をしたりということも。

EMDRなどのトラウマ治療も勉強したり、

試行錯誤していました。

 

しかしどこかスッキリしない感じがあったのですが、

発達障害、あるいは非定型発達の理解が進むにつれて、

いろいろなパズルが解けてきたのです。

ここ数年は発達障害を理解しようと相当勉強してきました。

心理的に考えても仕方のない脳の発達特性と、その後の心の傷つきを丁寧に分解しながら理解を進めていくようになりました。

もちろん、まだ道半ばですが。

 

患者さんには、自分自身が不安を感じている、

あるいは傷ついているんだ、ということに気がついていない人も少なくありません。

言葉にならないモヤモヤしたものに、私が名前をつけてあげるのです。

「不安だったんだね」

「怖かったね」

「辛かったね」

「腹が立ったよね」

「悔しかったよね」

ピッタリくるまで、言葉を探りながら確認していきます。

特に非定型発達の人は自分の状態に気が付きにくい人が多いのです。

 

まずは、自分自身が不安であること、傷ついていること、それらをありのままに見るという行為が大変重要なステップになります。

マインドフルネスの一つのあり方と言えます。

 

そして、どういう経緯で傷ついたのか、どうして傷ついたのか、

何を失って、怒りや不安を感じているのか、

振り返っていきます。

もちろんPTSDの症状が強く出ている方にはあまり深く突っ込みません。

 

さらに、不安に対する心の守り方は人それぞれタイプが異なりますので、心の防衛方法についても明らかにしていきます。

これらを言葉にできるようになることは重要ですが、それだけでは十分ではありません。

文章にしたり図式化することで可視化します。

実はこの目的もあって、当院では予約表を連絡表がわりに使っています。

何も書かなくても結構ですが、上手に使っている方も少なくありません。

限られたスペースだからこそ威力を発揮します。

 

そういうことができるようになってくると、客観的に自分を見る力が醸成されていき、

それだけで不安に圧倒されなくなったり、傷の癒やしが始まります。

 

ここまで来れた方には、過去の傷つきを癒していく方法を共有していきます。

ケースバイケースですが、最終的に子供の頃に傷ついた自分を慰められるのは、大人になった自分です。

 

キャッチボールをしているうちに患者さんが成長し、一緒に成長している感覚が得られ私も喜びを感じます。

実は、開院当初からロゴに込めた当院の精神療法の柱としてポジティブセラピーを発展させてきました。

ポジティブサイコロジーやポジティブ精神医学の出現を知らずに私が独自に発展させてきたものです。

従来の認知行動療法のように患者さんの欠点やマイナスを指摘することも大事ですが、

ポジティブ感度を徐々に上げていけるように合いの手を入れるようにしてきました。徐々にタイミングがわかってきました。

もしかしたらこれが私の精神療法の中で一番治療的かもしれません。

 

私の精神療法の一例です。

 

これを行う素地を作るためには初診で60分以上詳細に問診する必要があります。当院では資料の読み込みなど合わせて90分は費やします。

(もちろん病気や人によって精神療法の内容は大きく変わります。)

 

上記のような精神療法が必要ない方も多いですし、IQの低い方は精神療法よりも環境調整が重要です。

また、安定していて維持療法の方にはドリフターズ外来(飯食ったか?トイレ行ったか?早く寝ろよ!のシンプルな診察)をすることもありますが、

診察の中では患者さんからの質問は必ずお答えします。

「わからない」ということもありますが、ご質問には正直にお答えしています。

「わからない」というのは現在の精神医学ではまだわかっていないこともありますし、

単に私が勉強不足で知らないということがあります。

どちらなのかはっきりお伝えします。

もし、私が知らないことで、患者さんの治療にとても重要な質問だと私が感じたら、宿題として持ち帰らせていただきます。

 

質問に対して答えないという精神科医はいるようですが、私は必ず答えてきました。

もし質問に答えてくれないという感想を抱いている方がいるならば、一部の強迫性障害の方かと思います。

強迫性障害あるいはASDの強迫・こだわりによって、毎回10個くらい詳細な質問をレポート用紙に書いてきて質問する方がいます。

治療の開始時点では全てお答えするかもしれません。

しかし、徐々に「質問を2〜3個に絞ってください」とお伝えします。

質問一つが大きなテーマの人は毎回一つに絞ってくださいと伝えます。

 

あなた一人に無限に時間を使えない(資源はみんなで分かち合っている)という現実検討を持っていただくためのメッセージでもありますが、強迫症の治療的な意味を考えての指示となります。

強迫症は物事が自分の思い通りにコントロール(支配)できないことに不安を感じる病気です。(不安を打ち消すために完璧にして心を守ろうとするのですが)

自分なりに完璧にしたいのです。

強迫症の治療は、完璧にしなくても大丈夫だという安心感を手に入れることです。

世の中は思い通りにならない、支配できないものだと理解してもらうことが重要です。

10個の質問(不安に感じていること)を毎回解消させてスッキリするということを繰り返していても、

よくなりません。

全部は解消しない、少しモヤモヤした状態、少し不安な状態のまま耐えるという練習が必要なのです。

そのような意味があって、質問を2−3に留めて、あとはモヤモヤしたまま次回までとどめてくださいと伝えるのです。

ご説明しても納得されない方の場合は、「質問にも答えてくれない!」と攻撃的になってしまうのです。

信頼関係ができないのですが、当院では去る者負わずの姿勢です。(逆に他院にかかっている人に治療を開始して患者さんを手招きするということもしません。)

 

詳しく説明していくと精神療法の受け答えには一つ一つ意味があることが多いのです。

 

短時間でも意味のあるやり取りだとわかってくれる患者さんはどんどンよくなるし、

転居しても続けたいと言ってくださるのかなと思いました。

 

当院の治療ポリシーとして、心理士のカウンセリングは行わないと明記しています。

さらに精神科医によるカウンセリングも特殊な例を除いてやらないと明記しています。

カウンセリングと精神療法を私なりの表現で区別しています。

精神療法は通常の診療費用の中で、言葉による治療を意味します。

カウンセリングは(現在のところ)自費で構造を決めて(毎週何曜日の何時から何分とか)

行います。カウンセリンぐはどんなスタイルがあっても良いし、ただ愚痴や話を聞くだけというのも実際に少なくありません。

精神療法はなんらかの治療効果を期待した対話による診療なので、ただ一方的に話を聞くというのは治療ではないと思っています。

 

精神療法の範囲内でできることと、要求されてもできないことがあります。

急性期で症状が重い場合は、カウンセリングに近い形では精神療法は行いません。

勘違いしている方が多いのですが、うつ病の急性期に認知行動療法は行いません。

また、初診1回で問題を解決することを期待している方もおられますが、それができるような内容はもはや病気ではありません。

とりあえず1回だけかかりたいという方は遠慮していただいています。

 

他の精神科機関では、初診3分でパッと薬だして(精神療法をやらずに精神療法費用を請求して)おしまいというところも時々あるので、開院当初は話を聞いてもらいたい人は当院にいけと回されてくる人も多かったのです。

しかしその中のほとんどの人が精神療法を望んでいるわけではなく、ただ文字通り話を聞いてほしいとか

カウンセリング的な内容を求めている人がほとんどでした。

話を聞いてほしいという人が殺到してしまい、交通整理が大変でした。

無駄な労力で疲弊してしまうので、その辺を解決するために

「カウンセリングを行なっていない」と明示したのです。

とにかく話を聞いてほしいという方には「ご期待に添えない」とお伝えしてきました。

 

お電話の段階で、その方が何を望んでいるのかわかるようになったので、

今ではほとんどミスマッチは生じなくなってきました。

 

精神科って難しいと思いませんか?

 

 

 

 

 

 

 

3月 15, 2023

47 onushi様、ありがとうございます!

今晩も睡眠と認知症の懇話会に参加しておりました。

認知症に関しての地域連携について色々と考えさせられました。

と、いう内容でブログを書こうとログインする直前に、 Googleレビューに書き込みがあったという通知を目にしました。

すると、とても嬉しい書き込みが。

深いところまでご理解されていて驚きました。

素晴らしいです。

 

すでに削除されてしまった有難いお言葉も含め、良い評価をくださっている方は全てどなたかわかります。

皆様それぞれに直接お礼をお伝えしていないのですが、本当に励みになります。ありがとうございます。

 

 

 

 

12月 25, 2022

精神科薬副作用ー精神科医編

医師のお母様。当時のさいたま市では人気のクリニックでうつ病と診断され、治療を受けていた。スルピリドというお薬を主体に処方されていたが、日に日に症状は悪化し、焦燥感が強くなってきたが、何ヶ月間も撃つ手なしで経過していて、医師の息子さんが転院を希望。先方の診断ではうつ病が重症化しているという趣旨で、紹介され私が担当になった。すぐにスルピリドの副作用であるアカシジアが出ているとわかった。アカシジアとは抗精神病薬の一部で出現することのある副作用で、とにかく非常に辛くて苦しい副作用なのである。座っても寝てもじっとしていられないソワソワした感覚は地獄のようなものである。私は経験してはいないが、そのような患者さんを何人も見て、これほど苦しい副作用はほかにないと思っている。一刻を争って対処してあげないといけない副作用なのである。当時のガイドラインでは原因となる薬を止めて経過をみるという方法が推奨されていたが、一刻も早く症状を治めるために、私は英国では使われていたベータブロッカーを含めたメディケーションも加え、全力で加療に当たった。努力の甲斐があってか、徐々に楽になり、元々のうつ病の治療薬も本人にあったものを探してどんどん元気になっていた。(精神病理や老年期うつ病あるいは高齢者のうつ病に詳しい専門医もご覧になっているといけないので、念の為記載しておきますが、その後10年間血圧などでフォローしていますが、レビー小体病などを認めておらず、至って良好な経過をたどっています)

同じような時期に隣市の初老医からも不安神経症という大雑把な診断名で1人の患者さんが送られてきた。やはりアカシジアで焦燥感が出ている患者さんだった。

その時は、開業しているクリニックの精神科医はよく勉強されていないのだと感じていた。

その後、さいたま市の先生とお会いすいる機会があったが、大変勉強熱心でいつも新しい知見を取り入れている精力的な先生だと知った。だから、たまたま状況が見えなくなってしまったのかな、と振り返る。

どんなに立派な先生でもその時に気がつかないこともある。医師を変えてみてちがう視点から見てもらうというのも悪くない。

もう一方の精神科医は毎回とても時代遅れの治療と診断名、そして誤診というセットで患者を送って来ていたので、そちらは昔の精神病院勤務の知識のままで勉強不足の先生だったのだろう。

 

1人の精神科医で行き詰まったら手を変えてみる、というのは患者さんにとってメリットがあるかもしれない。

私も私の治療で行き詰まったケースでは転医という選択肢もあることは正直に伝え、1人で抱え込もうとはしない。

見捨てるというのとは話が違う。

自分に見えていないことがきっとあるはずだから。

 

12月 25, 2022

精神科薬の副作用ー性機能障害。

お薬は効果を期待して使うものですが、好ましくない副作用も生じることがあります。

新しくお薬を処方した時はお薬の副作用などないか必ず確認します。

患者さんは大体気になることを教えてくれて、それに対する対策を立てたり、お薬をやめてみたり、変えてみたり話あいながら治療を進めていきます。

しかし、患者さんから相談しづらい副作用というのもあります。

SSRIあるいはSNRIなどの薬剤で、性的な感覚が鈍くなってしまうことがあります。

現状では一般的に使用頻度の高いフルボキサミン、セルトラリン、パロキセチン、エスシタロプラム、デュロキセチンなどの薬剤です。

まず、中年男性はすぐに教えてくれます。

でもなかなか言えない人もいると思います。

若い女性が教えてくれたことは今までで数えるほどです。

しかし、これは副作用が少ないのではなく、統計的にはもっと沢山いるはずなので、

おそらく相談できずにいるのだと思います。

なんか理由も言わず、その薬を飲みたがらない、という女性は沢山いました。

正直にお話しにならないのでわかりませんが、その中の何割かは性的な副作用が嫌だったのではないでしょうか。

私の方も、初診で処方するときにいきなり性的な話をするのもどうかと思い、お伝えしないこともあります。

しかし、マイルドな表現で最初の段階でお伝えすべきだと考え、表現の仕方を検討しています。

 

また、スルピリドをはじめとしたドパミン拮抗薬と分類されるお薬は生理が遅れたり、乳房が張って時に乳腺炎様の痛みを伴ったり、乳汁が出たりすることもあります。お薬をやめれば大概は1〜2ヶ月で徐々に戻っていきます。

若い女性には第一選択薬とはなりませんが、どうしても今の段階ではこれしか使えない、という場合もあります。

その時は最初から副作用のお話をしておきます。

 

もしかしたらこれは副作用なのかな?と疑問に思ったら他の科の内容かもしれないと思ったとしても、とりあえず診察時に主治医に投げかけてみてください。当院では誤魔化したりせず、きちんと向き合って説明します。

 

 

12月 25, 2022

漢方薬の使い方-内科医

慶応病院で研修医としてすごしていたが、精神薬理を専門とする有名な先生が私の最初の指導医として熱心にご指導してくださった。

オールマイティな先生で、薬理が専門と言いながら、精神分析をはじめとした精神療法、家族療法などかなり熱心に勉強され、とてもバランスのとれた臨床をされていた。

しかも、当時はあまり一般的ではなかった漢方薬も勉強されていた。研修医には漢方の難しい概念は飛ばして、こういう時にはこれを試してみなとシンプルに実践的な知識を教えてくださった。

 

その後、今から20年近く前のこと。

同じ病院の先輩が漢方にはまっていて、「今度勉強会があるから参加してみませんか?」と誘ってくださった。

所謂気血水という基本中の基本の講座だった。

精神科の治療になんとなく限界を感じていたので新しい世界に関心を持った。

大野修嗣先生の講座を受講しまくった。

もっと知りたいと思って、大野先生を追いかけて小川町の診療所までいって実際の診療場面も拝見した。

 

それからはどんどんはまり込み、とにかくありとあらゆる漢方を処方しチャレンジしてみた。

もっと本格的に勉強したいと思い、東邦大学の三浦於菟(オト)教授、田中耕一郎准教授のところで私が身動きの取れる日曜日にハイレベルな講義が受けられるということを知り、毎回高速道路を飛ばして勉強しにいった。

毎回有名な先生がゲストとして講義をしてくださり、生薬の味見もできたり、

東洋医学の考え方、生薬一つ一つの詳しいお話を楽しく勉強し、どっぷりと漢方に浸かった。

しかし、漢方の専門医になるためには、常勤医として漢方専門医研修認定施設に一定期間勤務しないと専門医資格が得られない。

そんな時間のなかった私は専門医を取得することにはこだわらずに精神科での臨床を優先することにした。

 

それまでの漢方のイメージって、「長ーくのまないと効いてこない」というのが世間でのイメージでしたが、

意外と頓服に使えるような切れ味の鋭い漢方なんかもあったりして、服薬のタイミングとかもいろいろ考えて投与すると結構いいことがあります。

 

例えば、八味地黄丸。

大体高齢になってくると、心臓のポンプ機能や筋肉のポンプ機能が弱って血のめぐりが悪ったり、腎臓が少し弱って体に水分がたまってしまうことがあります。

夜睡眠のため横になると、下半身にたまっていた水が心臓に戻ってきて、めぐりだすと腎臓で尿が生成されます。

すると夜間尿で何回も起きてしまう方がいます。

 

そういう時に、八味地黄丸を少し眠前のみ服用してあげると夜間の尿の回数が減ることがあります。

そのような処方をしていたところ、ある患者が内科で私の処方を見せたようです。

するとその内科医は「漢方は1日3回長期間のまないと効かないもの。こんなでたらめな処方をしているのはやぶ医者だ」と患者さんにいったそうです。

無知な上にライバル心むき出しでびっくりしました。

当時は漢方に詳しくない先生はあまり見たことがない処方だったかもしれませんが、今ではよく見る当たり前の処方となっています。

あの内科医は覚えているのでしょうか。