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向精神薬

12月 25, 2022

精神科薬副作用ー精神科医編

医師のお母様。当時のさいたま市では人気のクリニックでうつ病と診断され、治療を受けていた。スルピリドというお薬を主体に処方されていたが、日に日に症状は悪化し、焦燥感が強くなってきたが、何ヶ月間も撃つ手なしで経過していて、医師の息子さんが転院を希望。先方の診断ではうつ病が重症化しているという趣旨で、紹介され私が担当になった。すぐにスルピリドの副作用であるアカシジアが出ているとわかった。アカシジアとは抗精神病薬の一部で出現することのある副作用で、とにかく非常に辛くて苦しい副作用なのである。座っても寝てもじっとしていられないソワソワした感覚は地獄のようなものである。私は経験してはいないが、そのような患者さんを何人も見て、これほど苦しい副作用はほかにないと思っている。一刻を争って対処してあげないといけない副作用なのである。当時のガイドラインでは原因となる薬を止めて経過をみるという方法が推奨されていたが、一刻も早く症状を治めるために、私は英国では使われていたベータブロッカーを含めたメディケーションも加え、全力で加療に当たった。努力の甲斐があってか、徐々に楽になり、元々のうつ病の治療薬も本人にあったものを探してどんどん元気になっていた。(精神病理や老年期うつ病あるいは高齢者のうつ病に詳しい専門医もご覧になっているといけないので、念の為記載しておきますが、その後10年間血圧などでフォローしていますが、レビー小体病などを認めておらず、至って良好な経過をたどっています)

同じような時期に隣市の初老医からも不安神経症という大雑把な診断名で1人の患者さんが送られてきた。やはりアカシジアで焦燥感が出ている患者さんだった。

その時は、開業しているクリニックの精神科医はよく勉強されていないのだと感じていた。

その後、さいたま市の先生とお会いすいる機会があったが、大変勉強熱心でいつも新しい知見を取り入れている精力的な先生だと知った。だから、たまたま状況が見えなくなってしまったのかな、と振り返る。

どんなに立派な先生でもその時に気がつかないこともある。医師を変えてみてちがう視点から見てもらうというのも悪くない。

もう一方の精神科医は毎回とても時代遅れの治療と診断名、そして誤診というセットで患者を送って来ていたので、そちらは昔の精神病院勤務の知識のままで勉強不足の先生だったのだろう。

 

1人の精神科医で行き詰まったら手を変えてみる、というのは患者さんにとってメリットがあるかもしれない。

私も私の治療で行き詰まったケースでは転医という選択肢もあることは正直に伝え、1人で抱え込もうとはしない。

見捨てるというのとは話が違う。

自分に見えていないことがきっとあるはずだから。

 

12月 25, 2022

精神科薬の副作用ー性機能障害。

お薬は効果を期待して使うものですが、好ましくない副作用も生じることがあります。

新しくお薬を処方した時はお薬の副作用などないか必ず確認します。

患者さんは大体気になることを教えてくれて、それに対する対策を立てたり、お薬をやめてみたり、変えてみたり話あいながら治療を進めていきます。

しかし、患者さんから相談しづらい副作用というのもあります。

SSRIあるいはSNRIなどの薬剤で、性的な感覚が鈍くなってしまうことがあります。

現状では一般的に使用頻度の高いフルボキサミン、セルトラリン、パロキセチン、エスシタロプラム、デュロキセチンなどの薬剤です。

まず、中年男性はすぐに教えてくれます。

でもなかなか言えない人もいると思います。

若い女性が教えてくれたことは今までで数えるほどです。

しかし、これは副作用が少ないのではなく、統計的にはもっと沢山いるはずなので、

おそらく相談できずにいるのだと思います。

なんか理由も言わず、その薬を飲みたがらない、という女性は沢山いました。

正直にお話しにならないのでわかりませんが、その中の何割かは性的な副作用が嫌だったのではないでしょうか。

私の方も、初診で処方するときにいきなり性的な話をするのもどうかと思い、お伝えしないこともあります。

しかし、マイルドな表現で最初の段階でお伝えすべきだと考え、表現の仕方を検討しています。

 

また、スルピリドをはじめとしたドパミン拮抗薬と分類されるお薬は生理が遅れたり、乳房が張って時に乳腺炎様の痛みを伴ったり、乳汁が出たりすることもあります。お薬をやめれば大概は1〜2ヶ月で徐々に戻っていきます。

若い女性には第一選択薬とはなりませんが、どうしても今の段階ではこれしか使えない、という場合もあります。

その時は最初から副作用のお話をしておきます。

 

もしかしたらこれは副作用なのかな?と疑問に思ったら他の科の内容かもしれないと思ったとしても、とりあえず診察時に主治医に投げかけてみてください。当院では誤魔化したりせず、きちんと向き合って説明します。

 

 

12月 23, 2022

精神科の薬の副作用ー内科医編

時節柄、ちょっと楽しいブログでも書こうと思っていたのですが、気になることがありアップします。

ある女性が精神病症状を伴う不安状態の治療で当院に通院していました。

お薬を使ったところ改善傾向が見られたので、そのお薬を少し増やしたところとても調子が良くなりました。

しかし、その女性は本当は薬に少し抵抗感があるご様子でした。もちろん、薬を好んで飲む人は少ないし、薬なしで完全で健康でありたいというのは誰しもが願うところです。

そんな中、頭痛、発熱、鼻水などの症状が出現し、〇〇〇クリニック(内科)を受診。

ご時世的にコロナの検査をして陰性。細菌検査もしたが陰性とのこと。

薬を処方したが発熱や頭痛が続き、医師が下した判断は・・・

「メンタルの薬の副作用で熱が出ているに間違いない」とのこと。

精神科に強い偏見を持っている医師は、なんでも精神科の薬のせいにしようとします。

さらに、「大人が風邪で熱がつづくなんで10億円の宝くじを当てるのより確率が低い」と言い切ったそうです。

「今すぐ薬を辞めないと大変なことになる」「その精神科に行くな」とすごまれたそうです。

不安になった患者さんから連絡を受け、詳しく問診。

頭を振ると響く強い頭痛、吐き気、38度台の発熱、自律神経症状を伴わず。鼻水、咳少々。

これ見たら研修医でもわかりますよね?

特定できないウィルスによる無菌性髄膜炎も疑わなくてはいけません。

風邪は万病の元です!ウィルスなんて検査してもほとんど同定できないことが多い。

一方薬による熱の可能性はどうでしょうか?

おそらく内科の先生方は精神科の薬で発熱を生じている場面を見て治療にあたった経験のある方はほとんどいないと思います。

私は実際に何例も経験してきました。

やはり入院するような重症な患者さんで薬による発熱を経験しました。

1、悪性症候群:抗精神病薬による筋肉の固縮とそれに伴う筋肉の融解、著しい交感神経症状を伴った(いわばサイトカインストームのような)高熱。

2、セロトニン症候群:SSRIなどの抗うつ薬(と多くは相互作用をきたす薬物と併用して)による焦燥感、著しい交感神経症状を伴った(これもサイトカインストームのような)発熱。

3、薬疹を伴ったアレルギー性の発熱

などです。

これらは緊急事態なので、待ったなしで対処します。私の勤務していた足利日赤は精神科身体合併症の最後の砦のような病院でしたので自分で対処しましたが、通常のクリニックならばすぐに高次医療機関に転送コースです。

ですから、精神科薬による発熱には人一倍敏感です。

発熱の原因は精神科薬ではないことはほぼ断言できるものの、すでに患者さんは内科医より薬のせいだと言われて薬に不信感を持っています。

そういった状況を踏まえ「私としては経過や症状からは精神科薬による発熱ではなく、軽い髄膜炎などの感染症を疑います。」

とお伝えしました。

しかし担当医は感染症の確率は10億円の宝くじ当選より低いと断言しており、患者さんも困っています。

そこで、「私は違うと思うけれど、薬に対してご心配されているようですから、ひとまずお辞めになってもいいですよ」

「ただ、何か担当医の診療に疑念を抱いたら、すぐに別の医療機関で診療を受け、第3者の見立てを聞いてみてくださいね」

とお伝えしました。

というのも、〇〇〇クリニックは地元の医療従事者からは危ない医師として有名なのです。

開業まで勤務してきた病院でもトラブルの連続だったようです。

 

結局その後患者さんから電話があり、「やはりおかしいと思って直接総合病院に行きました。髄膜炎の診断で総合病院に入院しました、薬のせいだなんていってすみませんでした」と謝っておられました。担当医は髄膜炎で入院となったことを知りません。

いずれにしても髄膜炎はにおいや音で頭がガンガン響いて本当につらい症状が出てくるのでとにかく早く回復していただきたいと思いました。

悪いのは素人の患者さんではありません。プロフェッショナルなはずである担当医です。

超一流国立大学出身の医師がどうして研修医レベルの診断ができないのでしょうか?

そこが大変不思議ではあります。精神科の薬に偏見をもっていれば、それが原因に違いないというバイアスがかかります。

以前も提案しましたように医師などプロフェッショナルな資格については何年かに1回更新制にしてその都度試験を課すなど、専門家と言えるレベルをキープすることが必要なのではないでしょうか。

 

それから、薬の副作用について、大切なお話があります。医師でも知らない人がいます。

今やネットで薬の情報が溢れていますが、玉石混合で正しい情報に辿り着くのは難しくなっています。

医師が勉強できるような内容はネットで無料で多に入ることはほとんどありません。

お金を払って知識を得ることが通常です。専門家の意見を得るためには弁護士などそれなりの対価を払います。

ネットで無料で問題解決できるほどの情報は得られません。

また、情報があっても、情報を読み解く医学的な知識がないと正しく理解できません。

副作用と有害事象ってご存知ですか?

副作用は、薬が原因ではない!と断言できない、薬の使用により生じた有害な反応のことです。

原因かどうか、その確らしさの強さの順番に、「確実に因果関係あり」「多分関係あり」「因果関係の可能性があり」「多分関係なし」「関係なし」「不明」の6つに分類されますが、どこまでが副作用とされていると思いますか?

日本の場合(欧米とは異なり)「関係なし」以外を全て副作用として記載しています。

ですから「多分関係なし」「不明」なども含まれているのです。

欧米はもっとしっかり因果関係が疑われるものだけを副作用としています。

さらに、有害事象とはどういったことを指すのでしょうか?

原因かどうか因果関係とは全く関係なしに、薬を飲んでいた時に生じたあらゆる好ましくない有害な反応全てを有害事象と呼びます。

例えば、薬を飲んでいたときにたまたま風邪をひいたら、「熱、咳、鼻水、喉の痛み」などが有害事象として記載されます。

これを薬が原因であると勘違いしてしまうのです。

そういった基礎知識もなく、ネットの情報で、「熱」と書いてあったから、薬のせいに違いないというのは早計なのです。

薬の副作用でどのような機序で熱が出るのか詳しく知っている専門家から見れば、全く違う見解になります。

適当なことをいう人間ほど断言してしまいます。

わからないことも多く、結果が確定しにくい医療において、誇大広告、断言的な物言いは要注意です。

ネットの知識は調べてもいいけど、鵜呑みにしないほうがいいとおもいます。