【精神科医のTVドラマ】
今日は帰宅が遅くなり、Shrinkのこともすっかり忘れていました。
ニュースでも見ようかとテレビをつけたタイミングで、NHK Shrink 精神科医ヨワイがはじまっていました。
画面には「最終話」と。
え?第3話で最終回!?とびっくり、残念。
【クオリティの高い作りこみ】
今回のパーソナリティ症の演出もとてもリアルできちんと監修されていました。
私が見たことのある精神科物のドラマでは断トツでリアルな内容です。
このクオリティーで毎週ずっと放送することは困難と納得。
どんなものもクオリティを追求すると大量生産できないのです。
調べたら母校の先輩宮岡先生が全体の医療監修をされていたのですね。意外でした。
パーソナリティ症の監修は林先生で、なるほど納得。
【境界性パーソナリティ障害】
今回のテーマはパーソナリティ症(パーソナリティ障害)でした。
私が大学病院に勤務していた時代は、境界性パーソナリティ症(障害)の過量服薬やリストカットが社会問題化していたためか、大学病院の病棟に入院している患者さんの多くが境界性パーソナリティ障害の方々でした。
ドラマの中でもヨワイ先生が説明していましたが、境パ症の方は見捨てられ不安が強く情緒が著しく不安定です。
他者を過大評価してベタベタと近づいてきた(好き好き♡)と思ったら、些細なことで猛烈に怒り誹謗中傷してくる(大嫌い!😡)など、極端ではげしい反応を起こします。
【医師と患者さんの恋愛関係】
見捨てられることを恐れる裏返しで、(本人が意識しているかは分かりませんが)性的に魅力的であろうとして誘惑的な外見の女性が多かったという傾向もありました。
医療の現場でも、境パ症の女性患者さんが話を聞いてくれる男性精神科医に対して猛烈な好意を寄せ、性的に誘惑してくるという状況は少なくありませんでした。
どちらかというと共感スタイルの私は話を聞いてしまい、患者さんの陽性転移を受けやすい傾向にありました。
それから当時20代の私は今よりはしゅっとしていたのと、年齢的なものもあって(誰も信じてもらえないかもしれませんが、笑)ちょっとはモテていたのです。
じじいの昔話と自慢話は嫌われるのですが、当時は境パ症の患者さんからデートに誘われることもよくありました。
【禁欲原則】
医師には禁欲原則という決まりがあって、患者さんと恋愛関係になってはならないという戒律があります。
ときどき患者さんとその執刀医の結婚など美談として紹介されることがありますが、医師としては失格と言わざるを得ません。
精神科では尚のことご法度です。
今では医師と患者さんは対等に近づいていますが、
昔は医師と患者さんではパワーバランスがだいぶ偏っていました。
学校の先生と生徒くらいの差があったかもしれません。
そのような不均衡のパワーバランスのなかで生じた職業としての役割で獲得した患者さんからの憧れ(陽性転移)を利用して、立場的に弱い相手を搾取してはならないということです。
「先生と生徒」もダメです。
卑怯な大人がその立場を利用して未熟なものを搾取してはいけないということです。
ドラマのなかでは、チェーン店クリニックの理事長早乙女医師が境パ症の患者さんと院外でデートしている様子が描かれていました。
これ、そのまんま実在する精神科医○○じゃん!と笑ってしまいました。
実在するその医師の行為は当時問題となって糾弾されていました。
【私の強さ】
私のすごい(笑)ところは、どんなにモテていても!?、患者さんのデートの誘いには1回も乗ったことがないということです。
デートは断りつつも、担当する患者さんとして見捨てるわけではないというメッセージを伝える方法を恩師から教わって練習してきました。
まあ、それが難しいのなんの。やっぱり断られたら多かれ少なかれ傷つくのが人間のサガです。
さすがに今は患者さんからデートに誘われることはなくなりましたが、
40代前半までは時々ありました。
お断りするときはやはり緊張しますよね。
【不得意】
大学病院のころは病棟で境パ症と摂食障害の患者さんばかり診ていて苦労しました。
市中病院では救急医として過量服薬(OD)やリストカット(リスカ)の患者さんをたくさん診てきました。
境パ症の患者さんにとって医師が一定の距離感を保つためには、患者さんに優しくせず熱心にせず、ニュートラルに(端からみたら冷たいと感じる程度で)接しつづけることが必要ですが、
話をじっくり聞いてしまうタイプだった私は、患者さんに振り回され、疲労困憊し、境パ症の治療には不向きだと悟り、開業してからは診ないようにしています。
パーソナリティ障害を当院の診療対象外としている理由の一部は上記のような経緯があります。
【第4話】
ドラマとしてはそれほど深みのない内容だったかもしれませんが、医療ドラマとしては極めてクオリティの高いドラマでした。
第4話を期待して待っています。