月別アーカイブ

3月 18, 2025

眠れない。

様々な状況や病気で「眠れない」という症状が認められます。

精神科では、「眠れない」という患者さんの訴えを毎日のように伺いながら診療にあたっています。

それなのに、私の世代以前の精神科医は睡眠医学についてほとんど学ばずに精神科医になりました。

睡眠を知らない精神科医は、不眠といえば、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難の四つに分類し、バカの一つ覚えのように持続時間の短い長いで薬を分類し、それぞれに当てはまるだけ、という愚かな治療をしてきました。

その前に、「なぜ眠れないのか?本当に眠れないのか?」について細かく検証しなければなりません。

市外の老精神科医は予約の不要なクリニックとして人気で、診療無しの薬だけ処方を含めて一日150人程度の患者さんを捌いているそうです。

初診も5分かかるか、かからないか。

不眠の訴えに対してはことごとくハルシオン(トリアゾラム)が処方されています。抱き合わせでデパス、ソラナックスなども処方されるパターンもあります。さらに驚くことは最凶に依存性などの問題のあるラボナという薬も平気で処方してくるのです。

ハルシオンは独特のふわっとした飲み心地で素早く強力な作用があり、その分離脱反応や依存性も超強力です。

私も若い頃は如何ともし難い入院患者さんに使ったことはありましたが、今は新たに処方することは100パーセントないです。

その場限り良くても後々良からぬ結果になると目に見えているからです。

なぜ、依存性が強く継続して使うことでデメリットがどんどん増してくるようなハルシオンを初診から処方しまくるのか?

これはビジネスとしか考えられません。

まず、初診でかかって処方された薬が切れ味よく効いたら、「助かった、良い医者にかかった」と思わせることができるでしょう。

実際に「良い先生だ」という人も少なくないようです。

次に、ハルシオンの依存性により、また患者さんはハルシオンが欲しくなり受診にきます。

だから予約制にしなくても患者さんから薬を求めてリピートしつづけます。これは積極的に治療スパンを調整しながらリードしていく治療とは対極にあります。

そうやって患者を増やしつづけ、当然診察しきれるわけがないので、処方箋だけ渡して患者数をキープします。

薬を大量にストックする者もいるので、過量服薬や薬の授受などの問題も発生してきます。

他の科の医師たちからは「精神科医はデタラメな診療をしている」と思われてしまうのです。

実際に「精神科医は今日もやりたい放題」という告発本も売れました。

それが、昭和のデタラメ精神科医の実態です。

医療の世界にビジネスを持ち込むと良いことがあまりありません。

その時代ごとに悪いやつが金儲けのためにデタラメをやってきているのですが、そいつらのために精神科医全体の評価が下がるのはとても残念なことです。

医療費削減ありきの議論なので外からそもそも話にならないのですが、一部の金儲けデタラメ医の行いに対して全体の診療報酬を下がるというのはおかしいのではないか。

財務省や厚生省は荒稼ぎをしているところからチェックしてデタラメ医を排除することに注力していただきたいですね。

こういう正義感って子供っぽいと思われるかもしれないのですが、一所懸命にまともにやっている人が報われて、デタラメやってる人はそれなりの仕打ちを受けるべきだ、と思うんですよね。

それから、このようなデタラメ医を受診している患者さんは犠牲者でもあるのだけれど、予約無しでパッと薬もらえて、とカジュアルに受診しているわけで、(こういうとひどいですが)どこかリテラシーがないというか、類友というか、自業自得な部分もあると感じることがあります。

ハルシオン漬けの患者さんを引き継いでも良くならないし、そもそも私とは考えが合わない感じがして、引き継ぎたくないな、と感じてしまうのです。

これは金儲けしているデタラメ医に対するやっかみではありません。金持ちなのはちょっと羨ましいけれど(笑)、良くないことをして金儲けするのは幸せではないよな、と思うのです。

一番困るのは彼らのせいで精神科医全体が疑問視されて、医療費削減のネタにされてしまい、まじめにやっているところが厳しくなっていくという現実です。結果としてまっとうな治療を患者さんたちが受けられなくなっていくということを皆様に知っていただきたいです。

医療費削減を考えるときは、悪い奴と全体を分けて考えましょう