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薬剤師

12月 25, 2022

漢方薬の副作用-薬剤師編。

医療情報にも流行がある。

漢方には副作用が全くないと誤解している人が多かった時代もあったが(いまだに多いかも・・)、漢方にも副作用があるのだということが一般にも少しずつ広まってきた。

例えば、漢方薬の一部に含まれる甘草という生薬によって血圧が上がってしまうことがある。

だいぶ古い話になるが、認知症には抑肝散という漢方が流行っていたが、生薬として含まれる甘草によって血圧があがってしまう人がいることが抑肝散の普及に伴い知られるようになってきた。

漢方とは違うが、それまで副作用がほとんどないと言われていた下剤の酸化マグネシウムが腎臓にたまってマグネシウム中毒を起こすことがあることもわかってきた。

これらの例のように副作用の注意喚起が医師の間で広まってしばらくして薬剤師の間で広まったりする。

 

私がある患者さんに甘草含有量の少ない漢方を処方していた。

血圧も正常だった。

患者さんが急に薬局を変えてから異変が起きた。

ポイントが付くから変えたという。(そもそも保険診療で値引きをして患者を誘引することは禁止されているので、ポイントを餌に患者を誘引することも違法となるのだが、大手薬局チェーンなどの政治的取引で黙認されている現状がある)

その薬剤師にこういわれたそうな。

「甘草の入っている漢方薬を使っている。血圧があがるかもしれない。処方医はそのことを知らないだろうから気を付けたほうがいい」と。

生薬から勉強している私には甘草が何グラム以上の場合は注意が必要とか、甘草で血圧が上がりやすい人がいるとか、そのような話は当たり前の前提となっています。その時点で変更すべき根拠は何一つありませんでした。

どうして私が副作用を知らずに処方していると考えたのかわからないが、何か疑義があるなら直接こちらに言って欲しい。

 

漢方ではないですが、下剤の酸化マグネシウムについても以下のようなやり取りが。

私が若くて腎臓もばりばり元気な人に酸化マグネシウムを低用量処方していました。

「酸化マグネシウムを続けて飲んでいると中毒になります。処方医は知らないと思いますので気をつけたほうがいいですよ」

もはやここまでくると、ただ自分が医師より物知りな薬剤師であるとマウンティング取りたいだけだとわかります。

マグネシウム中毒になる人はごく一部です。

高齢者など腎機能がおちているということがまず前提です。

そういう方に量が多めの酸化マグネシウムを継続処方していると中毒が生じかねないのです。

怪しい人は腎機能とマグネシウム濃度を測ります。

もはや医師の間では副作用も常識として使用されている酸化マグネシウム。

医師が知らないだろうと決めつけている根拠はわかりませんが、精神科医だから知っているはずがないと決めつけられたのでしょうか?

 

患者さんそれぞれ背景が違います。副作用も人によって出現する可能性や出現した場合のリスクも違います。

その患者さんに可能性の低い副作用のリスクを強調して不安に陥れることで自身の存在感を高めようとする薬剤師がいることは残念です。

 

以前は近隣の薬局との合同勉強会を開催していたこともあり、どういう意図で処方しているのかお伝えできる機会もありました。

患者さんがどこの薬局に行くかわからない状況だと難しいですね。

11月 30, 2022

睡眠リズム障害におけるメラトニンやラメルテオンの使い方。

長ったらしい題名になってしまいました。

今晩は慶應大学の若手向きの睡眠障害のクルズスに参加しました。

大学では教育目的にしばしば若手向きのクルズスが開催されます。

若手向きというと入門者向きの初歩的な内容の講義と連想するかもしれませんが、

しっかり最先端の知見が盛り込まれ、しかもわかりやすいということでちょくちょく参加しています。

製薬会社とは全く関係なく開催されるので、ニュートラルな内容でとても良いのです。

今回は睡眠リズムと関係の深いメラトニンという物質についてのお話がありました。

私もメラトニンについては高校生の時に興味を持って調べたことがあり、医師になってから薬として処方するに至り感慨深いものがありました。

それなりに勉強いたしますと、ロゼレム(ラメルテオン)などの使い方は普通の眠剤とは異なることを知ります。

メラトニンが作用する受容体にはMT1受容体とMT2受容体があって、前者は眠気に関連、後者は睡眠のリズムを前後に位相させる働きがあります。容量と服薬する時間帯によって効果が変わってくるので、添付文書の用法用量の知識では使いこなせません。

詳しい知識を持って処方した内容が理解できない薬局さんもいらっしゃいます。

慣れていないある薬局は「処方が間違っている。医師がわかっていないのではないか」と患者さんにも伝えたそうです。患者さんともトラブルになってしまうのです。

ポイントがつくからといってそういう薬局で服薬指導を受けて欲しくないのです。

昔から「ミニドクター」と揶揄される薬剤師はいました。

医師よりも自分の知識の方が優れていると示したいがために中途半端な知識で患者さんに知ったかぶりをしてしまう薬剤師です。

流行っている情報を鵜呑みにして「こんな副作用が出るので気をつけたほうがいい」などと、患者さんの服薬状況にそぐわない指導で不安に陥れたり、

最先端の増強療法を知らずに「この使い方は間違っている、この医師はヤブ医者だ」とか

自分の知識をひけらかそうと(勉強不足の知識で)マウンティングしようとします。

シンプルに疑義紹介で質問していただければ、薬剤師にも気持ちよく情報共有しますが、このような態度の方は話を聞いてくれませんから、

患者さんには薬局を変えてもらうようにお願いするしかありません。

もし、医師から薬局を変えてくださいという話があったら、そういった事情だとご理解ください。

薬を間違えたことは一度もありませんが、1日3回で服薬するところを2回と入力してしまうなどの処方ミスは稀にあります。

そういう時は、謝罪と共に、指摘してくださったことに感謝をお伝えします。

精神科の薬は結構難しいので、慣れているところが良いと思います。

最近できたばかりの薬局にミニドクターがいて、患者さんには利用して欲しくないなと思っていたところ、しばらくして閉店していました。周囲の病院や医院とトラブルが続いたのかも知れません。

ミニドクターは企業の産業看護師や産業保健師の中にも存在することが確認されています。

産業医療がますます発展していく中でミニドクターは淘汰されていきそうです。