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12月 25, 2022

精神科医はつらいよ。

精神科医になるモチベーションは人それぞれだと思いますが、過半数の精神科医は患者さんを救いたい、役に立ちたいという思いを持って医療を行っています。

しかし、精神科はとても難しい。

まだ正解が見つかっていない医学と言えると思いますが、もがきながら患者さんそれぞれの対応を考えています。

ずっと精神科医療に従事している人間でもわからないことだらけですから、ほかの分野の人たちから見たらもっと何をやっているのか、何を対象としているのかわからないのだと思います。

偏見も多い。

一応医学なので病気を診断して治療するという概念でやっていこうとする訳です。

(実際はそのようにはいかないことも多いのですが)

 

医師でも精神科を誤解しているかたが多くてびっくりします。

実際の話として。

1   あるクリニックの先生から電話がかかってきました。

「大至急うちの職員を診てほしい」と。

昼休みを返上して時間を作り、取り急ぎ20代の女性職員のお話を伺いました。

その職員としては特に精神科で相談したいことは無いと言います。

「別に」

と言われました。

(エリカ様の「別に」と同じ「別に」です。「打ち切り」というコミュニケーションのあり方で、拒絶よりもっと強い暴力に近いコミュニケーションと言われます)

とりあえずお話を伺うことには同意されたので、話を聞きました。

聞けば、新しく入職してきた別の女性とトラブルになり、うざったくなってもう仕事を辞めたいというのです。

今後は彼氏の経営しているダーツバーで働きたいと言います。

うつ病など精神疾患を疑わせる状況はなく、ご本人のお話内容に矛盾点も見出せず。

依頼してきた院長先生には、「病気ではありませんが、退職したいそうですから、よく話し合ってください」とお伝えしました。

院長先生としては、人手不足の中職員に辞められると困って、それをなんとかしてほしいということでした。

特別に時間を割いたことを感謝されることもなく、ただ残念な反応を示されました。

 

いや〜私はそのクリニックの人事部長では無いので、、、

他のクリニック内の揉め事を解決するのは精神科医療ではありません。

 

2  総合病院での一コマ。

通常の勤務が9−17時ということになっていましたが、定時に仕事は終わることはなく夜もそのまま仕事という平日。

その上で、夜間当直という当番があって救急車や直接救急外来を受診した人を夜通し診察します。

そのほか、オンコールと言って病院から呼び出されたら15分以内で出勤できるよう待機状態でいるという日があります。

 

夜間当直やオンコールといった夜間帯は患者さんの質が変わります。

あるオンコールの夜、携帯がなりました。「暴れている人がいるので至急来てください」

精神疾患の患者さんが不穏状態になっているのかと思いきや、

全身に刺青の入った男性が何やら大声を出しているではありませんか。

 

ひとまず、裏の方で何があったのか看護師から聴き取ります。

腹が痛いから注射を打てという訴えで受診したそうです。

その男性は以前にも夜間帯に受診して注射を打てといい、担当した医師がソセゴン(ペンタジン)という薬物を注射したことがあるそうで、

同じ注射を打てというのです。

連用すると薬物依存になりやすく、どういうわけかアルコール依存とかその道の人に人気?の注射でした。

そして今回対応した医師の態度が気に食わないということで大声を出して威嚇しているという状況でした。

 

そんなもん、診断した医師が薬の必要性を判断して、必要なければ説明して帰宅していただくしかありません。

退去しないならば警備員→警察に引き取っていただくことになります。

 

どうして精神科医が呼ばれたのかわかりませんが、私はセコムでもアルソックでもありません。

 

3 近くの総合病院から。

ある日忙しく診療していた日、目つきの鋭い殺気だった男性が受付に現れました。

「◯◯総合病院でここに行けって言われたんだけど!」

なんのことだかさっぱりわからず事情を伺うと、

総合病院に言って、頭がクラクラするからすぐに診ろと言ったらこちらに行けと言われたということでした。

直接行けば大丈夫だからと言われたそうですが、皆様ご存知の通り当院は完全予約制で急な受診のお時間を用意することができません。

そのような事情をお話すると話が違うと激昂。

じゃあどうすればいいんだよ!と。

 

その後もイライラした人が同じようにいきなり当院にやってきます。

◯◯総合病院からこちらに直接行くように言われたと言います。

何やら総合受付の看護師が話を聞いて、何科を受診するか案内しているようなのですが、

明らかに攻撃的な人やイラついている人、あるいは〇〇総合病院かかりつけだが対応に苦慮していると思われる人を選別して苦し紛れに一番近い精神科である当院に丸投げしていたのです。その病院にも心療内科はあるのですが、患者さんを“厳選”されているようで、“怪しい“患者さんには「◯◯総合病院には心療内科はない」と案内するそうです。

当院はその病院の系列でもありません。

その病院の苦情処理係でも対応困難者の受け皿でもありません。

◯◯総合病院の管理者の先生とお会いした時にご相談し、そのような対応をやめていただくようにお願いしました。

ただ、まともな患者さんは紹介してくださいなどと都合のいいことは言えませんので、全ての患者さんを当院に紹介しなくていいですということで話をまとめ、それ以来看護師レベルでの丸投げはなくなりました。

とは言っても◯◯総合病院の医師からの紹介はありますし、当院の対応できる範囲であればお受けして全力で対応しています。

 

開院当初はどんなケースでも引き受け、上記のようなケースでもなるべく当日中に診察していたので、総合病院ではそれが当たり前のようになってしまったのかもしれません。

 

悲しいことに人を物のように利用する人がいます。

親切心で色々なご相談に乗っているとどんどんエスカレートし

あの医師は話聞いてくれるよ、引き受けてくれるよ、という話が一人歩きしたり

当たり前のようになって、面倒な人はあそこに行けと放り投げるようになってしまうのです。

とても消耗しました。

 

私は八方美人は辞めてできることとできないことをはっきり示し(限界設定)、できないことはキッパリお断りするようになったのです。

摩擦は生じますが、本来の仕事に集中できるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

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